ケアの時代へ

一条真也です。

今日は、早朝から松柏園ホテルの神殿で「月次祭」が行われました。
その後、恒例の「平成心学塾」が開講されました。


                  「隣人館」について説明しました

               わが社の介護事業について説明しました


まずは、佐久間進サンレー会長が話をしました。
佐久間会長は、沖縄の「絆」社会を中心に「隣人祭り」を充実させるヒントを話しました。
それから、三浦敏秀部長が新規事業としての「隣人館」について概要を説明しました。
社会の高齢化という大きな流れから、シルバー・マーケットの背景、高齢者施設の種類、そして「隣人館」の特徴などを30分ほどかけて話しました。
隣人館については、ブログ「隣人館の起工式」を参考にされて下さい。


                    平成心学塾で話しました


その後、わたしが登場して「隣人館」の持つ社会的意義、そしてこの事業が互助会という本業のイノベーションにつながることなどを話しました。
それから、今日のキーワードとして「ケア」という言葉を挙げました。
わが社では、愛する人を亡くした人の悲しみを癒す「グリーフケア」のお手伝いに取り組んでいますが、ここにも「ケア(care)」という言葉が出てきます。
英語の熟語「take care of」は、「・・・を世話する」「大事にする」という意味です。
ここから、「世話」「配慮」「関心」「気遣い」などの意味が出てきます。
「ケア」という日本語がよく使われるようになったのは、最近のことです。
倫理学者の川本隆史氏によれば、1978年に刊行された柏木哲夫氏の『死にゆく人々のケア』(医学書院)が先駆的な例であるそうです。
もともと、「ケア」は、「health care(医療)」「nursing care(看護)」といった、もっと限定された、専門的な術語として使われてきました。しかし今では、ケアは「幸福」「倫理」「愛」「善」などの概念と密接に関わる言葉となっています。
どうやら、人間存在の根源的なものが、「ケア」につながっているといえそうです。


                   「ケア」について語りました 


アメリカの哲学者であるミルトン・メイヤロフも、著書『ケアの本質』(ゆみる出版)において、「ケア」を非常に広い概念で捉えています。
ちなみに『ケアの本質』は大変な名著で、わたしも何度か読み返しています。
メイヤロフは、「ケア」とは、「そのもの(人)がそのもの(人)になることを手助けすること」だと定義しています。そして、「他の人々をケアすることをとおして、他の人々に役立つことによって、その人は自身の真の意味を生きているのである」との名言を残しています。
看護、介護、グリーフワーク・・・・・それらすべての核となるものこそ「ケア」なのです。
今度、「勇気の人」こと東大病院の矢作直樹先生と「ケア」について語り合ってみたいと思いました。さまざまな視点から、「ケア」の本質を浮き彫りにしたいです。
ブログ「ホスピタリティの時代」に書いたように、先月の平成心学塾では「ホスピタリティ」について語りましたが、今日は「ケア」について語りました。
隣人愛の「かたち」としてのホスピタリティは、大きく「サービス」と「ケア」に分かれるような気がします。これまで、わが社は高品質の「サービス」を追求してきました。
しかし今後は、「サービス」だけでなく高品質の「ケア」が求められていきます。


                 『ケアの本質』と『創造的福祉社会』


昨日、『創造的福祉社会』広井良典著(ちくま新書)という本を読みました。
「限りない経済成長」を追求する時代は終焉を迎え、わたしたちは人類史上3度目の「定常期」に直面しているという内容でした。
1回目は、約5万年前の「心のビッグバン」と呼ばれる時代です。
絵画・彫刻・加工された装飾品などが生まれました。
2回目は、紀元前5世紀頃で、「精神革命」とか「枢軸時代」と呼ばれます。
ブッダ孔子ソクラテスなどが活躍しました。
そして第3回目が、いま現在です。わたしは「ハートフル・ソサエティ」と呼んでいます。
1回目のキーワードが「芸術」で、2回目が「宗教」「哲学」なら、3回目のキーワードは何でしょうか。わたしは、「福祉」あるいは「ホスピタリティ」ではないかと思います。
そこで、重要となるものこそ「サービス」であり、「ケア」です。
サービス、ケアともに、お客様の満足にゆくレベルに達したとき、本当の意味で、わが社は「ホスピタリティ・カンパニー」になれるのではないか。今日は、そんな話をしました。



今日、アマゾンに注文していた『ケアの社会学上野千鶴子著(太田出版)も手元に届きました。「上野社会学の集大成にして新地平」と銘打たれ、調査期間はじつに10年、総計500ページ超という大冊です。枕になりそうな分厚さです!
ぜひ、この本もじっくり読み込んで、「ケア」についてより深く学びたいと思います。
そして、学んだ知識はスタッフ全員で共有して、実践に生かしたいです。
14時から、隣人館についての「産経新聞」の取材を受けます。

  
              「ケア」についてより深く学びたいです


2011年10月18日 一条真也