葬儀人類学者

一条真也です。

東京から北九州へ帰ってきました。かなり雨が降っています。
夕方から、東京から来られたお客さんとサンレー本社でお会いしました。
東京大学大学院総合文化研究科・超域文化科学専攻・博士課程の田中大介さんです。田中さんは「葬儀」を専門に研究している人類学者です。


田中大介さん



田中さんは1972年、東京都生まれです。主専攻は人類学で、副専攻は日本民俗学・死の社会科学(Social Science of Death,Dying and Disposal)です。現在、国内では日本文化人類学会・日本民俗学会・日本社会学会、国外では米国人類学会(American Anthropological Association)に所属しています。
その研究内容は「現代日本の葬儀業に関する人類学的研究」です。2002年から葬儀業者および葬儀関連業者への実地調査を開始。その後、東京都内の葬儀社において実際に従業員として勤務するという調査形態を採った長期フィールドワークを実施し、その後も現在に至るまで国内・海外各地におけるフィールドワークを進めています。
東京造形大学埼玉工業大学の非常勤講師も務めておられます。
また、葬祭ディレクター技能審査協会の中央技能審査委員も務めています。
この4月からは、早稲田大学人間科学学術院人間環境学科の助手に就任します。



ブログ「社会貢献基金助成金交付式」に書いたように、今月5日に東京・新橋の全互協本部で、田中さんとわたしは初めてお会いしました。
日本における葬儀文化および葬儀産業を研究している田中さんは、わたしの著書をたくさん読まれています。『のこされた あなたへ』(佼成出版社)も読まれていました。
そして、以前わが社で調査を行った鈴木光さん(当時、ハーバード大学大学院)と親しいとか。鈴木さんと「葬祭」についての共著刊行の予定があると聞いて、驚きました。
なんでも、田中さんは三菱商事に勤務する商社マンだったそうです。しかし、どうしても葬祭業のことを学問的に研究したくて、東大の大学院に入り直して文化人類学を学ばれたそうです。ちなみに、商事時代は情報事業部でIT関連の仕事をされていたとか。



田中さんは研究を始めたばかりの頃に方向性で悩んでいた時、『ロマンティック・デス』(国書刊行会)を読んで鮮烈な体験をされたそうです。加えて、鈴木光さんがわが社で行った調査をもとにしたエスノグラフィを読んで興味を掻き立てられたとか。
ロマンティック・デス』といえば、この本を読んだハーバード大大学院の鈴木光さんがアメリカからはるばる北九州までやって来られたことも思い出しました。


わたし以上に、わたしのことを知っていました



田中さんは、今朝、北九州空港に降り立ちました。そして、わが社の隣人館サンレーグランドホテルグランドカルチャー教室北九州紫雲閣小倉紫雲閣ムーンギャラリーなどを視察された後、サンレー本社に来られました。
そこで、わたしは1時間半ほどのインタビューを受けました。
わたしの著書をたくさん持参されていましたが、そのすべてに膨大なポストイットが貼られているのに驚くとともに感激しました。最初に、ブログ「世界最古の洞窟壁画」で紹介した映画の話をすると、とても興味を持たれたようでした。
それにしても、田中さんがわたしの著書をはじめ、ブログ記事、これまで新聞や雑誌などに掲載されたわたしの発言などを事細かに知っていたのには驚きました。
わたし自身よりもはるかに知っていると言ってよいでしょう。


非常に礼儀正しい態度でした



インタビューの間、またその後も、田中さんの礼儀正しさが強く印象に残りました。
わたしは、田中さんほど深々とお辞儀をされる方を見たことがありません。
その「礼」を尽くされる姿勢に非常に好感を抱くとともに、「葬儀」研究に対する意気込みや使命感が感じられました。インタビューは、作家「一条真也」と経営者「佐久間庸和」のバランス感覚についての質問が多かったように思います。
わたしは、質問されたことに対して、すべて正直にお答えしました。


葬儀やグリーフケアについてお話しました



インタビューが進んで、グリーフケアの話題になりました。わたしは、「グリーフケアは魂の次元、あるいは霊的次元にまで踏み入らないと解決できない。心理学だけでは限界があると思う」と言いました。
また、次回作として構想している『グリーフケアとしての怪談』についてもお話しました。さらに、わたしはが「人類にとって神話と儀礼が不可欠だと思う。神話学は確立されているが、儀礼学はまだ確立されていないので、ぜひ日本にも儀礼学の礎を築きたい」と述べると、その考えに賛同してくれました。


田中さんと有意義な時間を過ごせました



今日は、気鋭の葬儀人類学者と意見を交換できて有意義な時間を過ごせました。
田中さん、今日は北九州まで来ていただいて、嬉しかったです。
今後とも、葬儀文化の研究のために、何でも協力させていただきますので、いつでもお声がけ下さい。これからも、どうぞ、よろしくお願いします。


2012年3月23日 一条真也