苦渋の選択

一条真也です。

今朝から、この記事を書こうか書くまいかと、ずっと悩んでいました。
でも、義を見てせざるは勇なきなり! やっぱり書くことにしました。
自見庄三郎金融・郵政改革相が、国民新党の代表になられました。
朝日新聞」の朝刊には、「自見新代表『苦渋の選択』」との見出しが踊りました。


朝日新聞」4月7日朝刊



自見大臣の実家は小倉の産婦人科医院で、ご自身も医学博士です。
30代で米国留学されたとき、スーダンの医師から「国のお金や施設がなければ、医師が腕を磨いても何の役にも立たない」という言葉を聞き、政治の道を志したそうです。
わたしの小倉高校の大先輩であり、親の代からのお付き合いがありました。
じつは、わたしは30代の頃、自民党小倉支部で総務会長を務めていたことがあります。当時、衆議院議員であった自見庄三郎先輩から頼まれたからです。
以来、政治オンチながら何年か総務会長を務めました。


政界最高の「論語通」である自見庄三郎大臣と



その後も、何度か自見大臣とはお会いしましたが、昨年初めて知った事実があります。
自見大臣は、大変な『論語』の愛読者で、孔子の教えを人生の指針にされているということです。奥様も『論語』を愛読されています。
一昨年の秋、松柏園ホテルで自見大臣ご夫妻と食事を共にしたときも、わたしが大学で「孔子研究」を教えていると知り、『論語』の話題で盛り上がりました。
わたしは、『論語』に収められている512のすべての言葉を自見大臣が憶えておられることに仰天しました。そのへんの学者などでは、とても勝負にならないでしょう。
はっきり言って、自見大臣は政界で最高の「論語通」ではないでしょうか。
なんと、自見大臣オリジナルの『論語』の金言入りのメガネ拭きまで頂戴しました。



昨年末に『世界一わかりやすい「論語」の授業』(PHP文庫)を上梓したとき、本を早速お届けしたところ、ご夫妻は非常に喜んで下さいました。
孔子文化賞の受賞が決定したときは、わがことのように喜んで下さいました。
そして、激務にもかかわらず、5月18日(金)に松柏園ホテルで開催される、わたしの「孔子文化賞受賞祝賀会」の発起人代表を快くお引き受け下さったのです。
今日あたりから、このブログを読んで下さっている方にも祝賀会の案内状が届くかもしれません。そこに記されている発起人代表の名前がまさに「時の人」ですので、おそらくは驚かれる方も多いのではないかと思います。
自見大臣と小生との関係は以上の通りですので、よろしくお願いいたします。


論語』の言葉は、いつの時代にも通用します



国民新党を離脱された亀井静香氏は、石原慎太郎氏らとともに、わたしの媒酌人である故・前野徹氏(元・東急エージェンシー社長)の大親友でした。
ですので、亀井氏と自見大臣が国民新党で合体されたときは、密かに嬉しく思ったものでした。現在の分裂劇は、正直言って、悲しいですし、辛いです。
「苦渋の選択」をされた自見大臣の心中をお察しいたします。
現状を見て、わたしは『世界一わかりやすい「論語」の授業』(PHP文庫)に出てくる言葉をいくつか連想しましたので、ご紹介したいと思います。



「道同じからざれば、相い為に謀らず」〈衛霊公篇〉
(同じ道を目指しているでなければ、自分の考えを相手に相談してもしかたがない)


「君子は貞にして諒ならず」〈衛霊公篇〉
(立派な人というのは正直なものだが、バカ正直ではない)


「君子の天下に於けるや、適も無く、莫も無し。義にこれ与に比しむ。」〈里仁篇〉
(立派な人というのは、無理に自分のやり方を押しとおそうともせず、何事にも執着せず、ただ正義にそって努力する人のことだ)


「子の曰わく、内に省みて疚しからずんば、夫れ何をか憂え何をか懼れん」〈顔淵篇〉
(心にやましいところがなければ、何も恐れる必要はない)



以上の『論語』の言葉に他意はありません。
ただ、わたしが、ふと思いついた言葉です。
でも、ひとつだけ言いたいことがあります。
それは、『論語』を愛する人は必ず「人の道」を大事にするということです。


カールじいさんの空飛ぶ家」のDVD



わたしの好きなディズニー・アニメに「カールじいさんの空飛ぶ家」があります。
究極の理想の地を目指して放浪するカールじいさんは、生涯にわたって道を求めて旅を続けた孔子の姿とも重なります。この映画を観ていると、「徳は孤ならず。必ず隣あり」という『論語』里仁篇の言葉を連想してしまいます。
いくら世間から誤解されても、正しい道を歩むならば、必ず協力者は現れる。


愛妻を失って孤独なカールじいさんにも、小さな協力者がいました。
わたしは、いつかカールじいさんのような老人になりたいと思っています。
今は、カールじいさんの隣りに寄り添う少年になりたいです。
5月18日の祝賀会で、自見大臣にお会いできますことを楽しみにしています。


2012年4月7日 一条真也