昭和の日

一条真也です。

今日は、「昭和の日」ですね。
激動の「昭和」は、62年と14日間続きました。昭和38年生まれのわたしは、昨日から自分なりに昭和を振り返るべく、日本映画のDVDをまとめて鑑賞しました。


「事件」と「復讐するは我にあり」のDVD



日本映画のDVDといえば、洋画DVDに比べて高価と相場が決まっていました。
しかし、ここ最近はずいぶん安くなってきましたね。
わたしは、暇を見つけては小津安二郎の映画DVDを再観賞しています。
ブログ「小津安二郎展」にも書きましたが、わたしは2013年は小津安二郎の生誕110周年にあわせて本を書きたいと思っているのです。
わたしは、小津安二郎の映画が昔から大好きで、ほぼ全作品を観ています。黒澤明と並んで「日本映画最大の巨匠」であった彼の作品には、必ずと言ってよいほど結婚式か葬儀のシーンが出てきました。小津ほど「家族」のあるべき姿を描き続けた監督はいないと世界中から評価されていますが、彼はきっと、冠婚葬祭こそが「家族」の姿をくっきりと浮かび上がらせる最高の舞台であることを知っていたのでしょう。
今年に入ってからさらに忙しくなってきたので、一時は執筆を断念しました。
しかし、「出版寅さん」こと内海準二さんから「一条真也小津安二郎論、ぜひ読みたい! データ集めなどは協力するから、ぜひ書いてよ!」と発破をかけられました。すでに版元も決定していることもあり、小津映画という極上のファインダーを通して、「冠婚葬祭」と「家族」の意味と本質を考察してみたいと考えています。
小津安二郎といえば松竹ですが、松竹DVDコレクションから「あの頃映画」という昭和の名作コレクションが大量にリリースされています。
一昨日の深夜から昨日にかけて、「事件」と「復讐するは我にあり」を観ました。



「事件」は、昭和53年公開の野村芳太郎監督の作品です。
大岡昇平の原作で、松坂慶子、永島敏行、大竹しのぶらが出演しています。
若い女性の刺殺事件をめぐる人間ドラマで、DVDのパッケージには「一人の少年を姉が愛し、妹が愛し奪い合う・・・・裁く法廷、裁かれる青春!」と書かれています。
この映画は、ほとんどが裁判の描写で構成されています。
いわば究極の裁判映画で、ブログ「裁判員に選ばれました」ではありませんが、いつか裁判員に選ばれた際に非常に参考になります。それにしても、出演している佐分利信芦田伸介丹波哲郎西村晃といった大物俳優の渋さにはシビれますね。
特に、丹波哲郎の弁護士、芦田伸介の検察官、佐分利信の裁判長が三つ巴で織り成す裁判絵巻はゾクゾクするほどスリリングです。しかも、そこに森繁久弥渡瀬恒彦の証人まで絡んでくるという豪華さ! 司法修習生などは必見でしょう。
あと、撮影当時20歳だった大竹しのぶが、すでに大女優の片鱗を見せています。



また「復讐するは我にあり」は、昭和54年公開の今村昌平監督の作品です。
佐木隆三の原作で、緒方拳、小川真由美倍賞美津子らが出演しています。
また、脇役の三國連太郎ミヤコ蝶々清川虹子らが存在感を示しています。
九州、浜松、東京で5人を殺した上、史上最大といわれる公開捜査を大胆にかいくぐった殺人鬼の犯行の軌跡と人間像を描いており、DVDパッケージには「殺人鬼の凄絶なる生き様をとらえた日本映画史上屈指の傑作!!」と書かれています。
原作者の佐木隆三氏は、今年3月末まで北九州市文学館の館長さんでした。
つい先日、佐木氏の新刊『わたしが出会った殺人者たち』(新潮社)を読んだのですが、その中に登場する「復讐するは我にあり」の主人公に興味を抱きました。
この映画で主演の緒方拳の存在感といったら凄まじく、もうメガトン級です。
平成になってから、緒方拳のような存在感のある役者はいなくなりました。


「真夜中の招待状」と「二十世紀少年読本」のDVD



また、昨日の深夜には同じく松竹映画「真夜中の招待状」を観ました。
この映画も「事件」と同じ野村芳太郎監督の作品で、昭和56年に公開されています。
原作は遠藤周作の『闇の呼ぶ声』ですが、著者唯一の長編ミステリーです。
「サイコロジック・ホラー」ということで、作中にはフロイトユング、それに当時では珍しかったであろうサブリミナル・テクニックまで出てきます。
DVDパッケージには、「そしてまた一人、闇の中に消えていった・・・・! 不思議な夢に誘われて愛する人の心を私は冒険する!」と書かれています。
小林麻美小林薫高橋悦史米倉斉加年丹波哲郎藤田まこと渡瀬恒彦芦田伸介宮下順子下條アトム日色ともゑ頼近美津子らが出演しています。
わたしは、昔からこの映画が好きで、じつはもう4・5回観ています。
ちょっと結末はネタバレになるので書きにくいのですが、冒頭からの怪しい雰囲気が好きで、たとえラストがわかっていても面白く観ることができました。
また、主演の小林麻美がとても美しいです。彼女の姿を見ることができる映画はこの作品と松田優作主演の「野獣死すべし」の2本だけです。
所属する田辺エージェンシーの社長との結婚を機に、芸能界からは完全引退しました。
現在では58歳くらいのはずですが、きっと今でも美しいのでしょうね。



また、「二十世紀少年読本」は林海象監督の作品で、昭和64年に公開されています。
そう、この映画はまさに昭和の最後の最後に撮影された映画なのです。
「20世紀少年」ではありません。「二十世紀少年読本」です。
「日本のサーカス」をテーマに、その娯楽の歴史とそこに生きた人々をファンタジックに描いています。まるでフェリーニのサーカス映画のような味わいがありますが、モノクロなので、さらにノスタルジックに仕上がっています。
大のサーカス好きであるわたしには堪らない映画で、これまでにも5回くらい観ています。なんというか、非常にクセになる作品なのです。
出演は。三上博史、佳村萌、秋吉満ちる、桂三枝、鰐淵晴子、原田芳雄佐野史郎片桐はいり大泉晃、それに麿赤児などです。この頃の三上博史は本当に美しい!
「真夜中の招待状」も「二十世紀少年読本」も幻想的で魅力的な作品です。
しかし、ともに惜しいのは前半のクオリティの高さが後半では保たれていないことです。
両作品とも、ラストがバタバタせわしなく、最後がチープな印象なのが残念でした。


西岸良平三丁目の夕日』の2冊



DVDだけでなく、「昭和の日」には漫画も読みました。ご存知、西岸良平の記念すべきシリーズ第60巻である『三丁目の夕日 夕焼けの詩[星になった犬]』、それに近所のコンビニで買った『月イチ 三丁目の夕日[天体観測]』の2冊です。
2冊とも「星」がテーマの作品が収録されています。コミックスの第60巻では、「ワン公」「家族写真」、そして表題作の「星になった犬」は良かったです。また、「月イチ」コミックでは「星は何でも知っている」と「七夕さま」、それに「十三夜」が泣けましたね。
西岸良平の作品を読むたびに、わたしの涙腺は必ず緩みます。
何を隠そう、わたしは三度の飯よりも西岸良平の漫画が好きで、彼の全作品を持っています。もちろん、全部読んでいます。何度も読み返しています。
三丁目の夕日」が映画化されて現在のように有名になる以前から、それこそ「ビッグコミック オリジナル」に連載がスタートした頃から愛読していました。

「昭和最後の年」である昭和63年に刊行された処女作『ハートフルに遊ぶ』(東急エージェンシー)にも、『夕焼けの詩』への熱い想いを綴っています。
「昭和の日」に読むのに、これほどふさわしい漫画もないでしょう。


昭和の終わりに出版されました



ちなみに、『ハートフルに遊ぶ』は、イベント、ホテル、リゾート、テーマパーク、ミュージカル、ディスコ・・・・・昭和最後の祝祭の記録となっています。その後、1989年の1月7日に昭和天皇崩御されて祝祭自粛の日々が続き、ついにはバブルが崩壊します。
あの頃、わたしは大学を卒業して広告代理店の社員になったばかりでした。
あれから、もう23年の時間が流れたわけですね。ああ、昭和は遠くなりにけり・・・・・。
ということで、今日は自分なりに「昭和」を偲んだつもりです。


2012年4月29日 一条真也