優柔不断

一条真也です。

今日は、憲法記念日ですね。
今朝の新聞各紙を見ると、「護憲」と「改憲」の立場に明確に分かれています。
そこには、両方ともに理があるといったような「優柔不断」さは一切ありません。


「優柔不断」といえば、俳優・塩谷瞬の二股交際騒動には呆れました。
モデル、料理研究家という2人の女性にそれぞれプロポーズしたそうです。
本人は「2人とも好きで結婚を申し込み、その後の決断ができずにズルズルきてしまった」といった発言をしています。これが本当なら、まさにウルトラ「優柔不断」男ですな。



ところで、塩谷瞬クンの故郷である石川県が困惑しているそうです。
今年2月、本人が自ら立候補して同県をPRする「いしかわ観光特使」の委託を受けたそうです。しかしながら、就任からわずか2カ月で今回の騒動が勃発しました。
さわやかに故郷の魅力をPRするはずだったのに、逆に「ダメ男」ぶりを全国に露呈してしまいました。何よりもクリーンイメージが求められる特使が、これ以上ないダークイメージで全国の女性を敵に回しかねない事態に陥ったわけです。
おそらく、今後の展開次第で特使解任となるのではないでしょうか。



それにしても、塩谷瞬クンが石川県の出身とは知りませんでした。
そして、わたしは非常に興味深く感じました。
石川県は、もともと加賀藩です。その家祖は、かの前田利家です。
利家は、信長、秀吉、家康を敵に回さず、その3人に仕えたことで知られます。
常にNo2の立場でいられた利家には「人望」があったとされます。
戦国武将たちから好かれる「人の良さ」が彼の最大の武器だったのかもしれません。
しかし、「人の良さ」というものは時には「優柔不断」につながります。
賤ヶ岳合戦や、秀吉の死後家康と対決するかどうかの時など、利家は優柔不断であったという批判もあります。



この「優柔不断」は前田家のDNAでもあったようで、戦国時代だけでなく幕末の混乱期も同じようなことが繰り返されました。加賀藩の最後の藩主となった前田慶寧は、父親ともども結局最後まで討幕か佐幕か、態度を決めかねました。
「百万石」を誇った加賀藩は、優柔不断のまま明治維新を迎えたのです。
そのことが、後世になって「維新のバスに乗り遅れた」と言われました。
最重大な局面に臨んでの慶寧の優柔不断ぶりは、むしろ家祖である利家の血を受け継いでいるとも言えます。まあ、前田家の人々は平和的であったとも言えますが。



このような藩主の影響を受けているのかどうかは知りませんが、石川県の人々は一般に「優柔不断」であると言われているようです。
というより、自分の本心を言わない人が多いように思います。なんでも、金沢で会合の案内などをすると、「行けたら行くわ」という返事が必ず返ってくるそうです。
「行けたら行くわ」。こんなに優柔不断な言葉はありませんね。
いったい全体、行くのか、行かないのか? どっちなのか。
「ナギの会」代表である渡辺寛氏が「金沢人は、なぜはっきりものを言わないのか?」というブログ記事を書かれており、金沢人の習性を詳しく論じています。
こんなふうに書くと、「畏れ多くも、前田利家公と塩谷瞬ごときを比較するとは不届き千万!」という怒りの声も聞こえてきそうですね。
でも、石川県の人がはっきりものを言わないことは以前からわたしも感じていました。
サンレー北陸の社員、また北陸大学の学生のみなさんにも感じていました。
しかし、それでも、わたしは金沢が日本で一番好きです!



ところで唐突ですが、あなたはウドンとソバのどちらが好きですか?
全国各地では、ウドンかソバの消費量は県別にはっきり優劣があるそうです。
47都道府県のうち、ウドンの消費量が多い「うどん県」とソバの消費量が多い「そば県」に分かれるとか。ところが、石川県だけはウドンとソバの消費量がちょうど半々であるという話を聞いたことがあります。
ウドンもソバも愛する石川県民。これには、2つの見方ができると思います。
1つは、石川県には東の文化と西の文化が均等に入り込んでいるということ。
もう1つは、「ウドンにする、ソバにする?」と選択を求められたときに「どっちでもいいわ」と答える優柔不断な県民性です。
まあ、それでも金沢はウドンもソバの両方が美味しいですけどね!



わたしは、塩谷瞬クンに言いたいことがあります。
今回の不祥事は「結婚できるほうと結婚するわ」では済みません。
優柔不断さを通り越して、「人の道」から外れています。
自ら進んで「いしかわ観光特使」にまでなりながら、故郷の名に泥を塗ったことは大いに反省しなければなりません。しかしながら、その一方で、わたしには「役者にあまりモラルを求め過ぎても仕方がない」という考えもあります。


塩谷クン、ぜひ今回の一件を肥やしにして、芸道に精進しなさい!
日本中の人気者になって、「彼は石川県の出身だってよ」と良い意味で言われなさい!
そして、「百万石まつり」で前田利家公の役を務めるぐらいにビッグになりなさい!
一昨年の「百万石まつり」では宍戸開、昨年は村上弘明が利家公を演じました。
そう、いつかは塩谷クンが石川県が生んだ最大の英雄を演じるのです。
できれば、仕事としてではなくボランティア(つまりノーギャラ)としてがよろしい。
それこそが、泥を塗った故郷の人々に対する最大の罪滅ぼしだと思います。


2012年5月3日 一条真也