『金魚屋古書店』シリーズ

一条真也です。

金魚屋古書店出納帳』上・下巻、芳崎せいむ著(小学館)を再読しました。
知る人ぞ知る「漫画」がテーマの「漫画」です。
現在も月刊「IKKI」に連載中の「金魚屋古書店」が有名ですが、本書はその前に発表された、いわば序論であり、前奏曲です。こちらを先に読んだほうが登場人物の関係などが理解できて、「金魚屋古書店」のほうも楽しめます。


登場するのはすべて実在の漫画



巨大な地下倉庫を持ち、「ないものはない」ほどの品揃えを誇る、伝説の漫画古書店の物語です。石森(石ノ森ではありません)章太郎の『サイボーグ009』にはじまって、水木しげるの『河童の三平』、手塚治虫の『キャプテンKen』、大城のぼるの『火星探検』、さいとうたかおの『ゴルゴ13』、あだち充の『タッチ』、田淵由美子の『フランス窓便り』・・・・・とにかく、実在する漫画作品が続々と登場します。
さまざまな漫画を中心にして、人々の心の交流が描かれます。
共通しているのは、けっして漫画の内容そのものには入っていかないこと。
あくまで、漫画は人間たちの繰り広げるドラマの脇役なのです。
これが続編の「金魚屋古書店」になると、漫画のほうが前面に出てくる感じで、ウンチクも多くなります。こちらの「金魚屋古書店」のほうはあくまで人間が主役なので、漫画に詳しくない人でも安心して読めます。



本書の下巻には、2つの漫画の神様の記念館が紹介されています。兵庫県宝塚市にある「手塚治虫記念館」と鳥取県境港市にある「水木しげる記念館」です。
この両記念館は、わたしも訪れました。考えてみると、わたしも結構な漫画好きかもしれませんね。本書に収録された作品の中では、個人的に、『火星探検』の登場する第6話「さらば火星よ」が一番好きです。また、『タッチ』をめぐって初恋が展開される第8話「青い空、白いボール」にはちょっと胸がキュンとしました。


実在の漫画を素材にした古書店物語。



さて、『金魚屋古書店出納帳』の続編が、『金魚屋古書店』第1〜13巻、芳崎せいむ著(小学館)です。さまざまな漫画を取り巻く一話読みきりの作品が揃っています。
金魚屋古書店出納帳』に比べると、一話の長さは短くなっています。
そのため、人間ドラマを描く余裕がなくなって、漫画のほうが主役になってきた感があります。金魚屋で働く人々やその周囲の人々のキャラクターは魅力的なのに、ちょっともったいない気がしました。それと、どんな人間ドラマでも強引に取り上げている漫画のテーマに合わせようとしている作品がいくつか目につきました。
もちろん、「漫画」をテーマにした漫画というアイデアは素晴らしいのですが、毎回そのテーマで感動させようというのは無理があるように思います。
1巻から13巻までを続けて読むと、ちょっと飽きてきます。



ただ、作者の漫画に対する愛情と知識には感服します。
わたしも、なつかしい漫画にたくさん再会することができました。
第1巻に出てくる『もーれつア太郎』(赤塚不二夫)、第2巻の『アドルフに告ぐ』(手塚治虫)、『宮澤賢治・漫画館』(手塚治虫ほか)、『銀河鉄道999』(松本零士)、第3巻の「楳図かずお」作品、第4巻の『デビルマン』(永井豪)、『怪奇ロマン傑作選』(わたなべまさこ)、第5巻の『あしたのジョー』(高森朝雄作・ちばてつや画)、第8巻の『ぼのぼの』(いがらしみきお)、『ドラえもん』(藤子・F・不二雄)、第12巻の『キャプテン』(ちばあきお)、『ミステリアン』(西岸良平)、『MMR マガジンミステリー調査班』(石垣ゆうき)、そして第13巻の『MASTERキートン』(浦沢直樹)などが登場したときには感激しました。それぞれの作品に思い出がたくさん詰まっていることを確認しました。
思えば、わたしも、これまでに多くの漫画を読んできたものです。



本書では、実在する漫画をもとにストーリーが進んでいきます。
ですので、自分の思い出の漫画が登場すれば、間違いなく楽しめるでしょう。
でも、これまで漫画をあまり読んでこなかった人にとっては、面白くないかもしれません。そう、本書は徹頭徹尾、「漫画」の漫画なのです。各巻の終わりには、登場した漫画作品についてのウンチクが書かれており、これも漫画好きにはたまりません。


*このブログ記事は、1991本目です。


2012年8月29日 一条真也

『鞄 図書館』

一条真也です。

『鞄図書館』第1巻、芳崎せいむ著(東京創元社)を読みました。
ブログ『金魚屋古書店』シリーズで紹介したコミックと同じ作者による作品です。
主役は、あらゆる書物を所蔵するという、幻の「鞄図書館〉」です。
不思議な鞄と司書の2人が世界を巡り、出会った人々と温かな交流を繰り広げます。


あらゆる本を揃えるという、幻の「鞄図書館」



現在、コミックの世界には「図書館もの」というジャンルがあるようで、本書をはじめとして、『夜明けの図書館』とか『図書館の主』とか『永遠図書館』といった作品がよく読まれているようです。大の本好きであるわたしは、もちろん図書館も大好きですので、こういったジャンルが育ってくれることは何とも嬉しい限りです。でも、本書『鞄図書館』は単なる図書館ものというよりも、摩訶不思議なファンタジーの部類に入るでしょう。
なにしろ、ひとつの鞄の中が途轍もなく広い空間になっていて、その中に、この世のありとあらゆる本がすべて納まっているという話なのですから・・・・・。



本書の帯には「出会いと知識を詰め込んだ、不思議な鞄の物語。」と大きく書かれ、「あらゆる本を揃えるという、幻の『鞄図書館』。あなたのお探しの本も、ここにあるかもしれません・・・・・」と続きます。鞄図書館の司書を務めるおじさんは、世界中いや、あるときは異世界にまでも足を延ばして本を貸し出します。
貸与期間は1年間で、そこにさまざまなハートフルなドラマが展開していきます。
それぞれのエピソードは約10ページ前後と短いですが、どれも内容が濃いです。
そして、登場する本たちのラインナップの渋いこと!



名作絵本の『ぐりとぐら』にはじまって、英国人エドワード・ウエバリーを主人公とする歴史小説『Waverley』、谷川俊太郎訳の『マザー・グース』。
アガサ・クリスティの『アクロイド殺害事件』、ダシール・ハメットの『血の収穫』。
ラヴクラフトの『ネクノロミコン』、ジュール・ヴェルヌの『海底二万里』、大阪圭吉の『とむらい機関車』、日本聖書協会の『聖書』、エドガー・アラン・ポーの『黒猫』。
レイ・ブラッドベリの『10月はたそがれの国』と『スは宇宙(スペース)のス』。
本書の版元が東京創元社で、もともとが同社のミステリ専門誌である「ミステリーズ!」に掲載されていたためでしょうか、創元推理文庫とか創元SF文庫が多いのが目につきますね。でも、それぞれの本たちはじつに魅力的に描かれ、なんだか読みたくなってきます。また、鞄はことあるごとにゲーテの言葉を持ち出しますが、これも味わいがありました。本好きには、たまらない短編集でした。早く、第2巻が読みたいです。


*このブログ記事は、1992本目です。


2012年8月29日 一条真也

世界平和パゴダ再開

一条真也です。

今日は、わたしにとって忘れられない日となりました。
閉鎖されていた「世界平和パゴダ」が、ついに再開したのです。


再開した世界平和パゴダ



これまでの経緯については、ブログ「世界平和パゴダ」ブログ「大僧正のお別れ会」ブログ「世界平和パゴダ再訪」ブログ「ミャンマー大使館」ブログ「ブッダ・ミッション」などに書いてきた通りです。詳しくは、そちらをお読み下さい。


威厳に満ちたミャンマー

ウ・ヴィマラ長老(左)とウ・ケンミェンタラ僧(右)



昨日、北九州市小倉の松柏園ホテルに3人のミャンマー僧が来られました。
ミャンマー仏教界の最高位にあるウ・エンダパラ三蔵位大長老を筆頭に、新たにミャンマーから世界平和パゴダに派遣されたウ・ヴィマラ長老とウ・ケンミェンタラ僧です。
ウ・ヴィマラ長老は1964年9月16日生まれの47歳、マンダリン仏教大学教授でもあります。ウ・ケンミェンタラ僧は1981年6月15日生まれの32歳、インドとスリランカで厳しい修行をされました。新しく赴任されたお二人は昨夜は松柏園ホテルに宿泊されましたが、今夜から世界平和パゴダで生活されます。
つまり、本日をもって「世界平和パゴダ」が再開されたことになります。
お二人とも、とても清々しい目をされ、かつ威厳に満ちておられます。
まさに、宗教者としてのオーラを存分に放たれていました。


記者会見のようす



また、この度、ミャンマーと日本両国の仏教交流及び親善のため、また再開された「世界平和パゴダ」の健全な運営を目的に「ミャンマー・日本仏教交流委員会」が発足しまし、松柏園ホテルで記者会見が行われました。
ミャンマー・日本仏教交流委員会」のメンバーは以下の通りです。
委員長:佐久間進サンレーグループ会長)
委員:鎌田東二京都大学こころの未来研究センター教授)
委員:井上ウィマラ(高野山大学准教授)
委員:井上幸一(農業資源開発コンサルタント
委員:八坂和子(宗教法人世界平和パゴダ理事)
委員:佐久間庸和(株式会社サンレー社長)


佐久間委員長に委嘱状が手渡されました



テレビ、新聞を中心に多くのマスコミが取材に訪れました。
最初に、エンダパラ大長老とキン・マゥン・ティン駐日ミャンマー大使より、サンレーグループ佐久間進会長に世界平和パゴダ運営の委嘱状が手渡されました。


エンダパラ大長老の挨拶

駐日ミャンマー大使の挨拶



それから、ウ・エンダパラ三蔵位大長老より挨拶がありました。
大長老は「ミャンマーと日本両国の友好の証である世界平和パゴダが今日から再開され、まことに喜ばしい。テーラワーダ上座部)仏教の普及によって、日本人の心の安らぎに貢献できることを願っています」と述べられました。
続いて、キン・マゥン・ティン駐日ミャンマー大使より「今回の世界平和パゴダ再開によって、両国の仏教交流と親善が進むことを願っています。日本のみなさまにも広く協力をお願いいたします」として、世界平和パゴダ運営のための募金の協力を日本人に呼びかけられました。振込先は、以下の通りです。
三井住友銀行 五反田支店
口座番号:普通 8416742
口座名義:WORLD PEACE PAGODA FUND AMBASSADOR KHIN MAUNG TIN


挨拶する佐久間委員長



続いて、「ミャンマー・日本仏教交流委員会」の佐久間進委員長が挨拶しました。
佐久間委員長は、「世界平和パゴダはビルマ戦線での戦没者の慰霊塔のようなイメージが強いですが、もともとパゴダとは聖なる寺院です。この聖地を一日も早く復活すべく微力ながらお手伝いさせていただくことになりました。わたし個人としては、日本が無縁社会を乗り越えるための拠点にもしたいと考えています」と述べました。


挨拶する八坂和子委員



委員の中では、八坂和子氏とわたしが記者会見に参加しました。
八坂氏は「世界平和パゴダの歴史は、ウ・ケミンダ大僧正とともにありました。御縁あって私が看取らせていただきましたが、ウ・ケミンダ大僧正が亡くなられたことによって、パゴダの第一幕は下りました。そして、いま、第二幕が上がりつつあります。この先のストーリーはまだ誰にもわかりません。これから、皆さんと一緒に力を合わせて素敵なドラマにしていきたいと思います」と、非常に感動的な挨拶をされました。


最後に、わたしも話しました



そして最後にわたしもマイクを持って話させていただきました。
「『無縁社会』とか『孤族の国』といった言葉があります。日本人のこころの未来は明るいとは言えません。このような状況を乗り越えるシンボルに世界平和パゴダはなり得ると思います。日本で唯一の上座部仏教の聖地であり、ブッダの骨を収める仏舎利も有していることから観光的資源としても大きな可能性を持っています。さらには、建築デザインも素晴らしく、平和のモニュメントとしての意味も限りなく大きいと言えます。わたしは、将来的に広島の原爆ドームと同じく『世界文化遺産』にすることも夢ではないと考えており、ぜひ、ユネスコに申請したいと思っています。諸々のことを含めて、世界平和パゴダの意義と重要性を広く発信していきたいです」と申し上げました。
ユネスコ世界文化遺産申請のアイデアは大使から大変喜ばれ、会見終了後には「全面的に協力させていただく」とのお言葉を頂戴しました。



記者会見は2時間以上にわたって続きました。
その模様は早速、今夕のTVニュースで放映されます。以下の通りです。
18:00〜19:00「こんばんは北九州」(NHK)
18:15〜19:00「今日感NEWS」(RKB)
18:15〜19:00「NEWS5ちゃん」(FBS)


三蔵法師孫悟空親子(?)



また明朝、「朝日」「毎日」「読売」「西日本」の各紙で報道されるようです。
会見終了後、ホテルのロビーでエンダパラ三蔵位大長老、佐久間委員長とともに記念撮影しました。悩める三蔵法師を助ける「孫悟空親子」として、これからもわたしたち父子は全力で頑張る所存です。すべてはブッダのお導きのままに・・・・・。


*このブログ記事は、1993本目です。


2012年8月29日 一条真也