『相互扶助論』

一条真也です。

いよいよ、『葬式は必要!』の脱稿が迫ってきました。
最後に、日本における冠婚葬祭互助会の役割について書きました。
参考文献として、『相互扶助論』ピョートル・クロポトキン著、大杉栄訳(同時代社)を再読しました。先日のブログで紹介したように、互助会の「互助」は「相互扶助」のこと。
もともと「相互扶助」というコンセプトを最初に唱えたのがロシアのクロポトキンでした。
彼は一般にはアナキストとして知られていますが、ロシアで革命家活動を終えたのち、亡命先のイギリスで1902年に『相互扶助論』を書きました。
ダーウィンの進化論の影響を強く受けながらも、「適者生存の原則」「不断の闘争と生存競争」を批判し、生命が進化する条件は「相互扶助」にあることを論証した本です。
クロポトキンによれば、きわめて長い進化の行程のあいだに、人類の社会には互いに助け合うという本能が発達してきたといいます。
近所に火事があったとき、人々が手桶に水を汲んでその家に駈けつけるのは、隣人愛、しかも見知らぬ人に対する愛からではないと、彼はいいます。
愛よりは漠然としている。しかしはるかに広い互助の本能が人間を動かすのだ!



無縁社会」が叫ばれる今、本書のメッセージはますます重要性を帯びてきています。
また、相互扶助が人間の本能ならば、それを基盤とする互助会は普遍的な事業です。
そして何よりも大切なことは、互助会は絶対に「相互扶助」という基本理念を忘れ、いたずらに金儲けに走ってはならないということです。これからも、全国の互助会が安心できる冠婚葬祭を国民のみなさまに提供できることを願っています。


                     助け合う関係の歴史


2010年3月14日 一条真也