「シャッターアイランド」

一条真也です。

「ナイン」に続いて、公開されたばかりの「シャッターアイランド」を観ました。
ちょっと太目になったレオナルド・ディカプリオ主演で、彼の以前の主演作である「ザ・ビーチ」を思わせるようなサスペンスフルな内容でした。
でも、わたし好みの映画で、非常にワクワクしながら最後まで集中して観ました。


四方を海に囲まれて完全に閉ざされた島、シャッターアイランド
そこには、精神を病んだ犯罪者だけを収容するという病院があります。
隔絶されたシャッターアイランドの鍵のかかった病室から、一人の女が姿を消します。
まるで煙のごとくに、誰にも気づかれることなく・・・・・。
調査のためにそこを相棒とともに訪れたのが、連邦調査官のテディでした。
彼は、不気味な島で次第に思います。「この島は何かがおかしい」と。


おっと、ここまでです。
この映画は結末の真実がすべてといってよい作品ですので、まだ観ていない方にとっては、何を書いてもネタバレになる怖れがあります。
でも、「あなたは上映開始から何分で、この謎が解けるか?」と予告編であおっていますが、わたしは結構すぐに結末が予想できました。
なんだか、最近、この手のラストシーンが多いような気がするのですが。
それでも、陰鬱な精神病院という舞台装置、孤島の絶壁、そして不気味な灯台・・・・・わたしの大好きな映画である「レベッカ」や「アザーズ」を連想させるようなゴシック・ロマンスの雰囲気がありました。わたしは醜悪なゴシック教会は大嫌いですが、陰鬱なゴシック小説は大好きなのです。(笑)
それにしても、「精神病者」と「犯罪者」という負の記号をダブルで持つ者たちの収容施設というのは、ある意味で新鮮さを覚えました。
こういったテーマを研究した人物が、フランスの哲学者ミシェル・フーコーです。
わたしは、昨年5月にフーコーのほぼ全著作を(再読も含めて)一気に固め読みしたのですが、その中の『狂気の歴史』と『監獄の歴史』が思い起こされました。
原作者のデニス・ルへインも、もしかするとフーコーの2冊の著作を読んで、この奇妙な物語を書いたのかもしれません。
興味がある方は、ぜひお読み下さい。


                  ミシェル・フーコーの著書


1950年代のアメリカの精神病治療の世界における「戦争」についても書きたいのですが、ネタバレにつながるといけないので、やめておきましょう。
最後に、この映画は字幕版と日本語吹き替え版とがありますが、ぜひ吹き替え版を選ばれたほうがいいと思います。
ストーリーが複雑で、登場人物が多くてわかりにくいということもありますが、戸田奈津子さんによる超日本語訳が素晴らしいのです。
登場人物の解説までしてくれる親切な吹き替えで、これは絶対におススメです!


2010年4月12日 一条真也