「タイタンの戦い」

一条真也です。

公開されたばかりの映画「タイタンの戦い」を観ました。
アリス・イン・ワンダーランド」に続いて、またしても3D作品でした。


クリスマス・キャロル」あたりから始まって、「カールじいさんの空飛ぶ家」「アバター」とハリウッドも3Dが大流行していますね。
さすがに何度も続くと目が慣れてきて、新鮮な驚きはありませんが、それでもテーマパークのアトラクションを体験しているみたいですね。
特に子どもにとっては、3Dメガネをかけること自体が非日常のイベントに感じられ、楽しいのではないでしょうか。
物語は、ギリシャ神話の神々と人間たちの戦いを描いています。
アリス・イン・ワンダーランド」の感想で戦争場面が嫌いと述べましたが、それはあくまでもファンタジーの場合です。
純粋に幻想の世界を楽しむべきファンタジーに、戦争という最も「リアル」な要素が入り込むのが嫌なのです。
神話となれば、話は別です。
世界中の神話に戦いはつきものですからね。



わたし自身は、1981年に公開された「タイタンの戦い」が好きでした。
ストップ・モーション・アニメの巨匠であるレイ・ハリーハウゼンの作品だったからです。
キングコングに一連のシンドバッド・シリーズ・・・映像の魔術師・ハリーハウゼンの映画は、わたしの想像力を広げてくれました。
彼の作品はすべてDVDでコレクションしていますし、『レイ・ハリーハウゼン大全』(河出書房新社)という大型本も愛読しています。
そういうわけで旧作「タイタンの戦い」に思い入れの深いわたしは、新作にはあまり期待せずに観たのですが、やはりそれなりに面白かったです。
アバター」でも主演したサム・ワーシントンは悪くはないのですが、ペルセウスのイメージではなかったような気がします。
メデューサの巣の場面に緊迫感があったのと、海の怪物クラーケンの造形も良かった。まあ、何より3Dの威力が大きかったですね。


       『レイ・ハリーハウゼン大全』と1981年版「タイタンの戦い」DVD


この物語の主人公は、ペルセウスです。
ゼウスを父に持つ、半神半人の英雄ですね。
そういえば、3月14日のブログでも紹介した「パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々」の中で、博物館でパーシーが教師から質問を受ける場面がありました。
その質問とは、「神と人間との間に生まれた英雄といえば誰か」というものでした。
勉強が苦手なパーシーは、なぜかその問題の答えだけは無意識が知っていて、「ペルセウスです」と答えるのです。
そのパーシー・ジャクソンも、ポセイドンを父に持つ半神半人でした。
気が遠くなるような時間を越えて、同じ半神半人として、ペルセウスとパーシー・ジャクソンはつながっているわけです。
この「半神半人」というアイデア自体が、ギリシャ神話の大らかさを見事に表現しているのではないでしょうか。



それにしても、映画「タイタンの戦い」に出てくる神々の人間くさいこと!
特に、兄であるハデスに気を遣い、息子であるペルセウスを心配するゼウスなど人間の中年男そのものです。
オリンポス12神の中心をなす万能の神などには全く見えません!
「神」と聞くと、何を連想するでしょうか。
宇宙の最高権力者にして、われわれ人間とはかけ離れた絶対的な存在、いわゆる「雲の上の存在」をイメージする人が多いのではないでしょうか。
しかし、そういった崇高な神の姿は、ユダヤ教キリスト教イスラム教といった「一神教」における唯一絶対神のイメージに近いと言えます。
しかし、ギリシャ神話の神々は、世界各地の神話で活躍する「多神教」の神々です。
『聖書』や『コーラン』に出てくる神は厳格そのものですが、『ギリシャ神話』や『古事記』に登場する神々は、酒に酔っ払いもすれば、ブチキレて大暴れもするし、好色で浮気もする・・・・・。もうハチャメチャですが、こういった度外れて大らかな神々のエピソードを知ると、なんだかホッとしますね。
多神教の神々にふれると人間の魂は奥底から癒される。
そう主張したのは、アメリカの心理学者ジェームズ・ヒルマンです。
ユング派「元型心理学」の創始者として知られるヒルマンによれば、それぞれの人間の魂には必要とする神々がいるそうです。
オリンポス12神なども、人間たちが求める役割を果たしているといいます。
もともと人間の魂は一神教には馴染まず、多神教を求めるものなのかもしれません。



わたしは、かつて『本当は面白い世界の神々』(双葉社)という本を監修しました。
5月には、『知ってびっくり!世界の神々』(PHP)という監修書が刊行されます。
それらの本で、人間よりも人間くさい、とにかく何事もやりすぎで過剰な神々の物語を楽しんでいただきたいと思います。
そして、それらの本の中に、あなたが求めている神を見つけていただきたいですね。
そうすれば、あなたの欲求不満は解消され、魂はきっと癒されるはずです。               


                神さまは、人間よりも人間くさい!!



2010年4月25日 一条真也