葬式論争のゆくえ

一条真也です。

宗教界のオピニオンペーパーである「中外日報」が送られてきました。
シリーズ「死の儀礼の変貌」の中で、「波紋呼ぶ『葬式無用論』の出版」の大見出しで、島田裕巳著『葬式は、要らない』(幻冬舎新書)についての仏教界の反論などを取り上げ、葬式論争を特集しています。


                  6月22日付「中外日報」より


その中で、「世論を分ける『無用論』と『有用論』」として、拙著『葬式は必要!』(双葉新書)も取り上げられています。
葬式についてのわたしのコメントもたくさん紹介していただいており、そのほとんどは著書に書いたことと同じですが、1点だけ従来とは視点が違う次のようなコメントを紹介していただきました。以下、「中外日報」6月22日号からの抜粋です。



「渦中の者として、こんなことを言うのも何ですが」と断わりながら、一条氏は「私は『葬式は、無用か必要か』という問題の立て方自体が間違っているのではないかと思います」と言う。
「法事法要、偲ぶ会、お別れ会の類が好きな人などいないでしょう。あえて言うなら、葬式も同じです。葬式や法事法要に集まる人というのは、別にそういった会が好きだから集まるわけではなく、亡くなった故人が好きだったから集まるのです。集まって、好きだった故人を偲ぶのです。大事なことは『葬式は、無用か必要か』ではありません。問題は『故人は、大切な人だったか』ということではないでしょうか」――こんなコメントを本紙に寄せている。(「中外日報」2010年6月22日号より)



他にも、島田裕巳氏や駒沢大学名誉教授の佐々木宏幹氏、また愛知・永正寺の水谷大定住職らがコメントを寄せています。
佐々木氏は日本におけるシャーマニズム研究の第一人者で、宗教哲学者の鎌田東二氏と『憑霊の人間学〜根源的宗教体験としてのシャーマニズム』(青弓社)という共著を出されています。
その佐々木氏は、仏教研究のエリートたちの仏教批判には「民衆からの視点」が欠けていると主張されています。わたしも、まったく同感です。
また、水谷住職は、寺主導で遺族本位の葬式を実現するために「葬儀改革」を打ち出しておられます。
水谷住職はまた、「寺が檀信徒のためにあるならば、『寺離れ』をするはずがありません。檀信徒に必要とされる寺になれば良いのです」と述べておられます。
また、禅宗の若き僧侶である泰丘良玄氏は、自身のブログに「葬式は必要!を読んで」という記事を書かれ、心強いエールを送って下さっています。
前向きに「葬式無用論」に立ち向かう僧侶の方々が増えてくれば頼もしいかぎりです。
僧侶といえば、日本で一番有名な僧侶である玄侑宗久氏が 「福島民報」6月13日号コラム「墓地共用のすすめ」で、『葬式は、要らない』と『葬式は必要!』を取り上げて下さいました。その中で、玄侑氏は「一条氏には申し訳ないが、どのような変化でも即ビジネスチャンスとして対応するのが商売として葬儀に携わる人々だろう。その究極の対応によって生まれたのが「直葬」という葬儀なき葬送である。」と述べられた後、次のように書かれています。
「むろん私は葬祭業界を非難するつもりではない。『無縁社会』が取り沙汰される現在、そうした人々にも誰かが対応するしかない。いわば戦後の核家族化や経済至上主義の必然的な結果として登場したのが葬儀無用論や直葬なのである。」
もちろん、わたしにも言いたいこと、あるいは説明させてほしいことは多々ありますが、玄侑氏のおっしゃられていることは正論だと思います。
冠婚葬祭業界に身を置く者は大いに傾聴すべきでしょう。


                「フューネラルビジネス」7月号書評


葬儀業界といえば、オピニオンマガジンである「フューネラルビジネス」7月号が「中外日報」と一緒に送られてきました。
今月号から、わたしの新連載「経営センスを磨く『力』十二則」がスタートしたのです。
ちなみに、第1回となる第一則とは「情報力」です。
同誌を購読ご希望の方は、綜合ユニコム株式会社[販売管理部]まで御連絡下さい。
(電話)03−3563−0025、(FAX)0120−05−2526です。
また、同誌の「ブックレビュー」には、『葬式は必要!』がトップで紹介されていました。
わたしの「葬式は贅沢で構わない」という反論と、その論拠である“いい意味での贅沢な葬儀”が「人間関係の贅沢につながっている」ことを取り上げてくれています。
また、ドラッカーの「継続」と「革新」を引き合いに「良いものはきちんと継続し、時代の変化に合わせて変えるべきところは革新する」ことが「葬式という文化にも欠かせない」という提言も、非常にコンパクトにまとめて紹介していただきました。
先日は、月刊「仏事」(鎌倉新書)や隔月刊「SOGI」(表現文化社)の最新号にも『葬式は必要!』の書評が出ました。
本当に、ありがたいことです。関係者の方々には心より感謝いたします。
思うに、多くの同業者の方々も『葬式は必要!』をお読みいただいているのではないでしょうか。ちなみに、アマゾン「マナー一般のベストセラー」ランキングを覗いたら、今でも『葬式は、要らない』と『葬式は必要!』が1位をめぐって争っています。
この葬式論争、まだまだ続きそうな気がします。お盆も近いですし。(微笑)


2010年6月24日 一条真也