『ほかならぬ人へ』

一条真也です。

今日は日曜日ですが、小倉では朝から雨がしとしと降っています。
晴耕雨読ということで、『ほかならぬ人へ』白石一文著(祥伝社)を再読しました。
著書は、わたしの最も愛読する作家の1人です。
第142回直木賞を受賞しましたが、本書はその受賞作です。


              自分の愛するべき真の相手を求める物語


著者の作品で最初に読んだのは、『僕のなかの壊れていない部分』でした。
読書家として知られるゼンリンプリンテックスの大迫益男会長から薦められたのです。
その理由は、主人公がわたしによく似ているからというものでした。
読んでみると一発でハマり、それ以来、彼の小説はすべて読んできました。



本書には「ほかならぬ人へ」と「かけがえのない人へ」という2編が収録されています。
いずれも、自分の愛するべき真の相手を求める物語です。
そして、いずれの物語も「恋愛の本質」を克明に描いています。
現在、「婚活」が時代のキーワードになり、いかにして理想の相手とめぐり逢うかが大きなテーマとなっています。わたしも『幸せノート』(現代書林)という婚活ガイドブックを書き、また会社では婚活塾を主催しています。
日々、多くの方々が良き伴侶を得られることを願っています。



かつてプラトンは、元来1個の球体であった男女が、離れて半球体になりつつも、元のもう半分を求めて結婚するものだという「人間球体説」を唱えました。
また、結婚には他人と結びつく途方もなく巨大な力が働きますが、ゲーテはそれを「親和力」と呼びました。さらに、「心から深く人を愛しているときに、人は他人を憎むことができない」という言葉を残しています。
わたしは、結婚とは不完全な魂同士が完全になるべく結びつく「結魂」であり、「結婚は最高の平和である」と信じています。
では、それらを実現する相手をいかにして見つけるか。
「ほかならぬ人へ」には、次のような主人公の青年の言葉が出てきます。
「ベストの相手が見つかったときは、この人に間違いないっていう明らかな証拠があるんだ」
「人間の人生は、死ぬ前最後の1日でもいいから、そういうベストを見つけられたら成功なんだよ」
最後に、本書はいわゆる「不倫」について新たな光を当てています。
渡辺淳一氏の『失楽園』や『愛の流刑地』などとは違った意味で、不倫小説の金字塔といえるかもしれません。


2011年3月6日 一条真也