被災者のコミュニティー

一条真也です。

今朝の「朝日新聞」に考えさせられる記事が出ていました。
仙台市で、東日本大震災の被災者のための仮設住宅市営住宅などへの入居を応募したところ、応募者が集まらずに、入居が難航しているというのです。
仙台市が「10世帯以上の団体申し込み」に限定したためだそうです。


                  「朝日新聞」4月17日朝刊


仙台市は、必ずグループ単位での入居を求めています。
単独では仮設や市営住宅に入れないそうです。グループにこだわる理由を、「神戸では高齢者を優先的に仮設住宅に入れた結果、地域コミュニティーが崩れ、孤独死を防げなかった。その教訓だ」と担当職員は話しています。
お互いに顔を知っており、助け合えるグループがまとまって入居するのが最善という判断であり、これを「コミュニティー申し込み」と名づけています。しかし、10世帯以上の団体という制約に、「そんなに集められない」と被災者の間には戸惑いが広がり、「グループに入らない人はどう生きていけばいいのか」と批判の声があがっているそうです。


                  「朝日新聞」4月17日朝刊


この記事を読んで。「いろいろ考えさせられる話だ」と思いました。
朝日新聞」ならば、この問題を「孤族」という自製キーワードと関連づけて書いてほしかったですが、まさに「孤族」とか「無縁社会」の名残を感じます。
まず、10世帯以上というのは多いような気がします。
仙台市ほどの都会なら、地域コミュニティの実情を考慮して、せめて3世帯〜5世帯ぐらいでもいいのではないかと思います。
それから、阪神淡路大震災の教訓を活かして、必ずグループ単位で発想そのものは間違っていませんが、たとえグループに入らず単独で入居する人でも、入居した後でグループを形成する仕組みを作らなければいけません。
問題は、「孤独死」を防止するということです。
一昨日お会いした「隣人愛の実践者」こと奥田知志さんも、「神戸の避難所では孤独死が多かった」と言われていました。



孤独死の防止ならば、すでに多くのアイデアや試みがあります。
隣人の時代』(三五館)には多くの実例が紹介されています。
その中でも、「孤独死の防人」こと中沢卓実さんの言葉が参考になります。
中沢さんは、千葉県松戸市常盤平団地自治会長ですが、孤独死問題における我が国の第一人者です。いわば、日本一の孤独死の防人です。
ブログ『ひとり誰にも看取られず』、ブログ『孤独死ゼロ作戦』ブログ『団地と孤独死』で中沢さんの著書を紹介してきました。
ついには、わたし自身が中沢さんのもとを訪れ、ブログ「常盤平団地」に書きました。
さらに、ブログ「孤独死講演会」で紹介したように、昨年7月27日には、中沢さんと2人で孤独死問題を語り合うイベントを開催しました。
隣人の時代』の刊行後、中沢さんからお電話をいただき、「素晴らしい本を書かれましたね。わたしも大いに宣伝させてもらいます」と言って下さいました。
また、本も大量に購入していただきました。中沢さんに心より感謝しています。



中沢さんは、孤独死をずっと見ていると、現代社会に生きる人々は「ないないづくし」で暮らしていることがよくわかるそうです。
それは次の10点に集約されます。
  1.配偶者がいない。
  2.友だちがいない。
  3.会話がない。
  4.身内と連絡しない。
  5.あいさつをしない。
  6.近隣関係がない。
  7.自治会や地区社協の催しに参加しない。
  8.人のことはあまり考えない。
  9・社会参加をしない。
 10.何事にも関心をもたない。



中沢さんによれば、「孤独死は行政がなんとかしてくれる」という、あなた任せになる危険性があるといいます。そうではなく、自分たちの生活習慣を改めて、地域の幸せを皆でつくるという発想が大事なのです。
そこで出てくるキーワードが「あいさつ」でした。中沢さんは、次のように述べます。
「わたしたちが結構腐心するのは、言ってみれば、おじいちゃん、おばあちゃんから、若い人たちまで共通して理解されるものは何かということです。そうして行き着いたのが『あいさつ』することでした。誰でも参加できる、納得できる、それは『あいさつ』をすること。地域でこの運動を高めていこう。あいさつは孤独死ゼロの第一歩なのですよ」
たしかに、「孤独死」は人間という『間』からドロップアウトする部分があるわけで、そうならないためには、もう一度『間』に戻る必要があります。
そのためには、『間』に入る魔法の呪文としての「あいさつ」が重要になるわけです。
「間」に入る魔法とは、まさに「間法」と言ってもいいかもしれません。



「あいさつ」という「礼」の力を使った「間法」こそが人間の幸福に直結していることを、中沢氏は孤独死の中から学んだのです。近隣との「ないないづくし」の関係を、あいさつすることによって、「あるあるづくし」に変えていけるのです。
そして、人間が「間」に入るための究極の「間法」として、「隣人祭り」があります。
人前に出るのが億劫になった高齢者の方々を隣人祭りで地域の隣人たちに紹介することで、「ひきこもり」老人となって孤独死に至る悲劇を回避することができます。
わが社では年間500回もの隣人祭りの開催をサポートしていますが、最初は挨拶どころか自己紹介もできない方もいらっしゃいます。
そんなときは、わが社のスタッフが紹介してさしあげるのです。
「こちらが内海さんですよ、こちらは中野さんですよ」などと言って、紹介するのです。
そこで初めて、「こんにちは」「はじめまして」などと言葉が交わされます。
また、「よくスーパーでお会いしますね」とか「公園の近くにお住まいなんですね。あそこはお花がきれいですよね」といった会話も出てきます。
行政の担当者の役割とは、まさにこの紹介者になることだと思います。

               
                孤独死を防ぐ「隣人祭り」とは何か


隣人の時代』の帯には、「日本一“隣人祭り”を開催する冠婚葬祭互助会社長が提案する解決案」と書かれています。これは出版社が作ったコピーですが、わたし個人というより、わが社には隣人祭りを開催し、成功させるノウハウがあると自負しています。
内閣官房の方からは「福島で隣人祭りを」と言われましたが、福島だけでなく、仙台でも気仙沼でも石巻でも、どこでもいいです。
もし、被災者の方々に隣人祭りを開きたいという自治体があれば、わたしにできる範囲での協力をさせていただきたいと思います。遠慮なく下記に御連絡下さい。


〒802−0022 北九州市小倉北区上富野3−2−8 ㈱サンレー社長室
TEL:093−551−3030  FAX:093−511−2521 (担当:鳥丸、織田)


2011年4月17日 一条真也