サイババ死す

一条真也です。

今朝の「朝日新聞」を開くと、社会面に元キャンディーズの故・田中好子さんの通夜の記事がありました。その下では、サティヤ・サイババの死が報じられていました。
それは、田中さんの記事に比べて、あまりにも小さな囲み記事でした。



                  「朝日新聞」4月25日朝刊


サイババは、精神世界における超有名人でした。
彼の信者は、全世界で数百万人いるそうです。
伝説の聖者であるシルディ・サイババの生まれ変わりであると自ら主張し、さまざまな超能力を身につけているとして注目されました。
その超能力で、多くの人々の不治の病を治し、「ビブーティ」と呼ばれる聖なる灰から腕時計まで多くの物を空中から出したといいます。
一躍「インドの聖者」として知られたサイババは、世界中から多くの信者を集めました。
日本のメディアでも大きく紹介され、関連書もたくさん出ました。
なんといっても日本におけるサイババ・ブームに火をつけたのは、『理性のゆらぎ』青山圭秀著(三五館)というベストセラーの存在でした。
この本によって一気に日本で「サイババ」の名が有名になりました。



多くの日本人がサイババの超能力を信じ、それによって「こころ」の無限の可能性を信じました。ある意味で、少し前に流行した「引き寄せの法則」のように“願望実現の魔法”としてサイババの超能力を信じていたビジネスマンもいました。
わたしの友人もその1人でした。彼は大学卒業後、イベント企画の会社を起業したものの何をやってもうまくいかず悶々としていましたが、サイババの存在を知ってからポジティブに物事を考えるようになり、ある新規事業を起こして成功させました。
わたしはというと、じつはサイババの超能力を信じていませんでした。
彼の超能力は、あまりにも派手というか、わかりやすすぎるため、おそらくトリックだろうと思っていました。空中から出したとされる腕時計に「SEIKO」と記されているのを知って、非常に胡散臭く感じたことを憶えています
また、本物の超能力者であるなら、聖灰など出すよりも、パンや薬を無限に空中から出してインドの貧しい人々に与えてあげればいいのになどと思っていました。


                  「スポーツ報知」4月25日号


その後、彼の超能力はトリックであることが暴かれ、批判を浴びました。
今朝の「スポーツ報知」紙には、その死が大きく報道されていました。
それによれば、彼は自分は「96歳まで生きる」と予言していたそうです。
実際は84歳で死んだので、この予言は外れたことになります。
「スポーツ報知」では、インドの「奇跡の霊能者」と書かれていましたが、奇跡は起きませんでした。しかし、わたしも新聞を読んで知ったのですが、晩年のサイババは多額の寄付を元にして、病院や学校や水道をたくさん建設したそうです。
この記事を読んで、わたしはブログ『憑霊の人間学』でも紹介した「礼能力」という言葉が心に浮かびました。宗教哲学者の鎌田東二先生から学んだことですが、ハートフル・ソサエティで本当に必要なのは単なる「霊能力」ではなくて、「礼能力」ではないかと思います。
それは、他者を大切に思える能力、つまり、「仁」や「慈悲」や「隣人愛」の力のことです。
サイババは多くの信者が思っていたような「霊能力者」ではなかったかもしれませんが、思いやりを多くの人々に与え続けた「礼能力者」だったのかもしれないと思いました。
そういえば、昔、鎌田先生とサイババの超能力について議論したことを思い出します。


            サイババは「聖人」だったのか「魔人」だったのか


わたしは、かつて心のエネルギー量の過剰な人物をコレクションした本を監修しました。
世界の「聖人」「魔人」がよくわかる本』(PHP文庫)という本ですが、サイババは「聖人」と「魔人」の間にあった人ではなかったでしょうか。
彼は多くの人間を騙しましたが、同時に、多くの人間を救ったのです。


                書斎にあるサイババのピル・ケース


わたしの書斎には、彼の写真入りのピル・ケースがあります。
それを見ながら、彼の魂はどこに行くのだろうかなどと考えました。
ちなみに、サイババの死因は心臓・呼吸器不全だったそうです。合掌。


2011年4月25日 一条真也