この世で離れ、あの世で結ばれ

一条真也です。

脚本家・三谷幸喜さんと女優・小林聡美さん夫妻が離婚しましたね。
「スポーツ報知」の紙面で初めて知りました。どちらも才能にあふれ、個性ゆたかなお似合いのカップルだと思っていましたので、非常に驚きました。


                  「スポーツ報知」5月24日号


小林聡美さんといえば、デビューが映画「転校生」の主役です。
ブログ「御袖天満宮」に書いたように、わたしは今から3日前に映画の舞台となった尾道で、「転校生」に出てくる神社の長い石段を上から見下ろして、「ここから落ちたら大変だなあ」と思いました。そのとき、わたしは自分が石段を転落するシーンを映像としてイメージしたわけです。その石段は、注意深く下りたので大丈夫でした。
でも、その30分後ぐらいに別の石段で足を踏み外し、転倒してしまいました。
そうです、わたしは「石段を転落する」という思考を時間差で現実化したのです!
映画「転校生」では中学生の男女が抱き合って石段を転落し、2人の心が入れ替わるといいった話です。もしかすると、あの映画のメッセージは「男は女の心を、女は男の心をもっと知らなければならない」ということかもしれませんね。
男女がお互いの心をよく知れば、そこに「思いやり」が生まれます。
小林聡美さんと三谷幸喜さんの離婚の理由は、「はっきりした理由があるわけではない。考え方や価値観の小さな違いが積み重なり、それがだんだん大きくなってしまったようです」とのこと。もしも夫婦の心が、ときどきは「転校生」のように入れ替わることができたら、離婚する夫婦の数ももっと減るでしょうね。


                  「スポーツ報知」5月24日号
   

「スポーツ報知」には、21日に肺炎で亡くなった俳優の長門裕之さん(享年77歳)の通夜の記事も出ていました。ちょうど、わたしが小林聡美さんが転落した石段を見た後で骨折した同じ日に、長門さんが亡くなられたわけです。
長門さんの通夜は、23日に東京・元麻布の善福寺で営まれました。
俳優仲間ら約400人の方々が弔問に訪れられました。
東日本大震災から2ヶ月ちょっとで、坂上次郎、田中好子児玉清、そして長門裕之といった芸能界の大物が次々に亡くなったことには何かを感じてしまいます。



それにしても、祭壇の遺影が素晴らしかったですね。
長門さんは楽しいことが好きで、いつも笑みを絶やさなかったそうですが、祭壇の遺影は右手の人さし指を突き出し、おどけた表情をしています。
1年ほど前に撮影されたもので、喪主を務めた弟で俳優の津川雅彦(71)さんが選んだそうです。亡くなった兄の「いたずらっぽさが一番出ている」という理由だとか。
この遺影を見ていると、わたしは長門さんが、「おいおい、神妙な顔しちゃって! あんたも、いつかは死ぬんだよ。わかってんのかい?」と言っているような気がします。



また、津川雅彦さんは2006年に映画「寝ずの番」のメガホンを執りましたが、長門裕之さんとともに出演した俳優の笹野高史(62)さんが弔辞を読みました。これがまた世の常識を打ち破るもので、笹野さんは、なんと映画で使われた「チョンコ節」という卑猥な歌を「不謹慎かもしれませんが・・・」と歌い始めたのです。
「チョンコ節」の卑猥な言葉のオンパレードに僧侶は神妙な顔をしていたそうで、笹野さんは「孤独な戦いだった」と感想を述べました。でも、参列者からは「長門さんらしい」と笑みがこぼれたとか。こういう笑いに包まれて人生を卒業していくのも素敵ですね。


                葬儀とは究極の「自己表現」である


ブログ「卒業メッセージ」にも書いたように、故・田中好子さんの葬儀での肉声メッセージにも言えることですが、長門さんの通夜でのユーモラスな遺影といい、エロティックな歌といい、いずれも「あの人らしかったね」と言われる送り方であり、わたしは全面的に肯定します。かつて監修した『「あの人らしかったね」といわれる 自分なりのお別れ』(扶桑社)でも、わたしは数多くの個性的な葬儀を提案しています。
これから、もっと団塊の世代を中心に、新しいお葬式のスタイルが考えられるはずです。
「人生の卒業式」である葬儀は、究極の「自己表現」となっていくことでしょう。
日本人は人が亡くなると「不幸があった」などと言いますが、死なない人はいません。
すべての人が最後は不幸になるというのは、絶対におかしいとわたしは思います。
「あの人らしかったね」と言われる個性的な旅立ちを多くの方々が実現することによって、いつの日か日本人が死を「不幸」と呼ばなくなることを願ってやみません。
ちなみに、田中好子さんの葬儀には夫である小達一雄さん、長門裕之さんの通夜には弟である津川雅彦さんという名プロデューサーの存在がありました。



最後に、長門さんは最愛の妻であった南田洋子さんを2年前に亡くされています。
長門さんと南田さんの2人は、芸能界一の「おしどり夫婦」と長らく呼ばれていました。
南田さんが晩年に認知症になったときも、長門さんは懸命に看病をされていました。
長門さんの棺には、南田さんの愛用していた洋服や写真などが収められたそうです。
ブログ「結婚する理由」にも書いたように、わたしは「結婚とは結魂」だと思っています。
古代ギリシャの哲学者であるプラトンは、元来一個の球体であった男女の魂が、離れて半球体になりつつも、元のもう半分を求めて結婚するのだと言いました。
またスウェーデンの神秘思想家であるスウェデンボルグは、この世で真に結ばれた魂は、あの世でも再び結ばれるのだと言いました。
ブログ「丹波哲郎の大霊界」で紹介した「丹波哲郎大霊界2 死んだら驚いた!!」には、霊界結婚式という「結魂」式の場面が出てきました。
霊界研究の第一人者だった丹波さんは、スウェデンボルグの影響を受けていたのです。
長門さんと南田さんの魂が、あの世で再び結ばれることを願っています。
この世で離れる魂もあれば、あの世で結ばれる魂もある・・・・・。
そして、この世からあの世へと送られる魂もある・・・・・。
まことに、冠婚葬祭業とは「魂のお世話業」であると思います。



2011年5月24日 一条真也