木村政彦を知っているか

一条真也です。

ブログ『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』は、かなりの反響がありました。
現在も、検索サイトのキーワードから続々と当ブログに参入者があります。
今朝の「朝日新聞」の書評欄にも、同書が取り上げられていました。


                  「朝日新聞」10月30日朝刊


「朝日」の書評は、ノンフィクション作家の後藤正治氏でしたが、「格闘技マニア的な執念には感服するが、表題にも示される過剰なまでの思い入れ、さらに少々大仰な言葉遣いに引っ掛かる」などと書いています。
ネットなどでも、同書を高く評価しながらも、タイトルについては賛否両論あるようです。
暴力団排除条例が全国的に施行された現在、あまりにも時代錯誤というか殺伐としたタイトルであり、せめて副題にすべきだったという意見もありました。
後藤氏は、書評の最後に「こってりとした格闘技興亡史を読了してよぎるのは、道を究めた異能者たちも盛衰の輪廻の中で生きるというほろ苦さであり、武道的世界もまた、世の変容を反映して流れ去っていく無常観である」と書いています。
ふむふむ、なるほど。でも、同書の強みは「格闘技マニア的な執念」はもちろん、後藤氏が違和感をおぼえたという「過剰なまでの思い入れ」「少々大仰な言葉遣い」、そして、何よりも「こってりとした」内容に尽きると思います。


                 「GONG格闘技」2011年8月号


とにかく、わたしは同書を全面的に肯定します。
同書に関連する情報も、いろいろと集めてきました。
「GONG格闘技」8月号で、同書の著者・増田俊也氏と吉田豪氏が「木村政彦とは何か」というテーマで対談していることを知り、わたしは早速アマゾンで注文しました。
届いた同誌を開き、対談を読んでみましたが、これがまた面白いこと!
ますます、木村政彦に対する興味が強くなってきました。


                     木村政彦力道山

                    木村政彦大山倍達


対談の中では、木村政彦の破天荒な私生活の話題が面白かったです。
もちろん、その強さが本物であったことも語られていました。
そして、力道山はけっしてセメントが弱くはなかったこと、最近貶められている感のある大山倍達も本当に強かったことも検証されています。それにしても力道山木村政彦大山倍達の三つ巴の人間模様は、梶原一騎の名作『男の星座』の世界そのもの。
少年の頃に「世界最強の男」に憧れた者としては、限りないロマンを感じてしまいます。
なお、木村政彦大山倍達への評価については、「拳の眼」という極真空手のブログの記事「木村政彦、大山倍達を語る(1985年)」に詳しいです。



YouTubeには「君は木村政彦を知っているか」というドキュメンタリー番組がアップされています。かつてテレビ東京系で放送された貴重なTV特番です。
「君は木村政彦を知っているか」というタイトルで、90分番組でした。
全国放送ではなかったそうなので、見たことがない人も多かったでしょう。
増田俊也氏は、以前に録画したDVDは見ていたそうです。
でも、関西の読者からネットにアップされていることを知らされ、改めて見直したとか。
増田氏は、2010年2月23日のブログで以下のように述べています。
「とくに力道山戦のからむ部分は、私から見るとかなり歴史認識に間違いが多いのは許せないが、史上最強の木村政彦の人生の大まかな流れを知るために、あらゆる柔道ファンとMMAファンにぜひ観てほしい。
これを観ると、私がいま雑誌上で連載している『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』の全体の流れを概観できると思う。動画を見ることによって、活字をより深く読むこともできるかもしれない」



番組のオープニングはヒクソン・グレイシーvs船木誠勝戦です。
木村政彦夫人、牛島辰熊夫人をはじめ、岩釣兼生山下泰裕篠原信一らの柔道家、さらにはエリオ・グレイシー遠藤幸吉真樹日佐夫まで取材しており、見所満載です。
また、晩年の木村政彦がNHK福岡に出演して、力道山戦の舞台裏を赤裸々に語っている映像が紹介されているのには非常に驚かされました。
昭和58年の番組とのことですが、いやあ、NHK福岡もやりますな!
こんな貴重な映像をYouTubeに投稿して下さった方に感謝です。
どうか、この映像が削除されないことを心から願っています。
全部で8つに分かれていますが、わたしは日曜日の夕方に一気に見ました。
それにしても、ソーシャルな動画アーカイブとしてのYouTubeは、ますます存在意義を強めているように思います。偉大なり、YouTube


2011年10月31日 一条真也