全国葬祭責任者会議

一条真也です。

東京から北九州へ帰ってすぐ、社長訓話をしました。
サンレーグループ国葬祭責任者会議での訓話です。
今日は、最新刊の『のこされた あなたへ』(佼成出版社)の内容をはじめとして、上級心理カウンセラー、グリーフケアの話題、そして、「ケア」の意味について話しました。


国葬祭責任者会議のようす



今年は、なんといっても東日本大震災の話題に尽きます。
2011年3月11日は、日本人にとって決して忘れることのできない日になりました。
三陸沖の海底で起こった巨大な地震は、信じられないほどの高さの大津波を引き起こし、東北から関東にかけての太平洋岸の海沿いの街や村々に壊滅的な被害をもたらしました。その被害は、福島の第1原子力発電所の事故を引き起こしたわけです。
大量死の光景は、『古事記』に描かれた「黄泉の国」がこの世に現出したようでもあり、また仏教でいう「末法」やキリスト教でいう「終末」のイメージそのものでした。
津波の発生後、しばらくは大量の遺体は発見されませんでした。
いま現在も、多くの行方不明者がおられます。


真剣に訓話を聴く参加メンバーたち



火葬場も壊れて通常の葬儀をあげることができず、現地では土葬が行われました。
さらには、海の近くにあった墓も津波の濁流に流されました。
葬儀ができない、遺体がない、墓がない、遺品がない、そして、気持のやり場がない・・・・・まさに「ない、ない」尽くしの状況は、今回の災害のダメージがいかに甚大であり、辛うじて助かった被災者の方々の心にも大きなダメージが残されたことを示していました。現地では毎日、「人間の尊厳」というものが問われました。亡くなられた犠牲者の尊厳と、生き残った被災者の尊厳がともに問われ続けていたのです。


グリーフケアについても詳しく説明しました



それから、ブログ「上級心理カウンセラー」で紹介した資格について話しました。
さらに、今までのおさらいとして「グリーフケア」の話をしました。
わが社では、数年来、グリーフケアのサポート活動に力を入れてきました。
グリーフケア」を簡単に説明すると、「悲嘆からの回復」ということになるでしょうか。
「悲嘆」と言っても、さまざまな種類があります。
ブログ『悲しんでいい』に書いたように、わが国におけるグリーフケアの第一人者で、上智大学グリーフケア研究所の高城慶子所長によれば、「悲嘆を引き起こす7つの原因」というものがあります。それは、次のようなものです。
1.愛する人の喪失――死、離別(失恋、裏切り、失踪)
2.所有物の喪失――財産、仕事、職場、ペットなど
3.環境の喪失――転居、転勤、転校、地域社会
4.役割の喪失――地位、役割(子どもの自立、夫の退職、家族のなかでの役割)
5.自尊心の喪失――名誉、名声、プライバシーが傷つくこと
6.身体的喪失――病気による衰弱、老化現象、子宮・卵巣・乳房・頭髪などの喪失
7.社会生活における安全・安心の喪失



このように、わたしたちの人生とは喪失の連続です。
そして、それによって多くの悲嘆が生まれていきます。
あの阪神・淡路大震災が日本に「ボランティア」の時代を呼び込んだように、わたしは今回の東日本大震災が「グリーフケア」の時代を呼ぶのではないかと思っています。
を日本に根付かせるのではないかと思っています。
大震災の被災者の方々は、いくつものものを喪失された、いわば多重喪失者です。家を失い、さまざまな財産を失い、仕事を失い、家族や友人を失ってしまった。しかし、数ある悲嘆の中でも、愛する人の喪失による悲嘆の大きさは計り知れないと言えるでしょう。グリーフケアとは、この大きな悲しみを少しでも小さくするための仕事です。



ブログ「月あかりの会」に書いたように、2010年6月、わが社では念願であったグリーフケア・サポートのための会員制組織をスタートしました。
月あかりの会は、愛する方を亡くされた、ご遺族の方々のための会なのです。
あの阪神・淡路大震災が日本に「ボランティア」の時代を呼んだように、わたしは今回の東日本大震災が「グリーフケア」の時代を呼び込むのではないかと思っています。
わが社には200名の「1級葬祭ディレクター」の有資格者が在籍しています。
この中から、どんどん新しい「上級心理カウンセラー」 も誕生することでしょう。



最後に、「ケア」というグランド・コンセプトについて話しました。
英語の熟語「take care of」は、「・・・を世話する」「大事にする」という意味です。
ここから、「世話」「配慮」「関心」「気遣い」などの意味が出てきます。
もともと、「ケア」は、「health care(医療)」「nursing care(看護)」といった、もっと限定された、専門的な術語として使われてきました。しかし今では、ケアは「幸福」「倫理」「愛」「善」などの概念と密接に関わる言葉となっています。
どうやら、人間存在の根源的なものが、「ケア」につながっているといえそうです。
看護、介護、グリーフワーク・・・・・それらすべての核となるものこそ「ケア」なのです。
隣人愛の「かたち」としてのホスピタリティは、大きく「サービス」と「ケア」に分かれるような気がします。これまで、わが社は高品質の「サービス」を追求してきました。
しかし今後は、「サービス」だけでなく高品質の「ケア」が求められていきます。
サービス、ケアともに、お客様の満足にゆくレベルに達したとき、本当の意味で、わが社は「ホスピタリティ・カンパニー」になれるのではないか。今日は、そんな話をしました。


月の広場」の上空には満月が・・・・・



訓話の後は、松柏園ホテルで忘年会が開かれます。
サンレー本社を出るとき、「月の広場」の上空に見事な満月が上っていました。
わたしは、「ああ、月は六本木にも横浜にも小倉にも同じように上るのだなあ」と改めて思いました。六本木ヒルズタワーや、横浜の「光の塔」の上空の月も良かったですが、やはり「月の広場」に上る月が最も幻想的でした。


松柏園ホテルで忘年会が開かれました



そして、いよいよ忘年会のスタートです。
佐久間会長、わたしが挨拶した後、東常務の音頭で乾杯。
みんなで一年の労をねぎらい合いました。ふだんは厳しい顔をしている面々も、アルコールが入ると、じつに素敵な笑顔を見せてくれます。松柏園もクリスマス・ムード一色で、わたしは「ああ、今年ももう少しで終わるのだなあ」という感慨に浸りました。


松柏園ホテルもクリスマス・ムード一色です



2011年12月8日 一条真也