なぜ結婚しにくい?

一条真也です。

なんと、1月も今日で終わり。ついこの前、新年を迎えたと思ったばかりなのに!
時間が過ぎるのは本当に速いですね。いや、わたしもトシを取るはずですな。
さて昨日、「日本の将来人口推計」、いわゆる「人口推計」が公表されました。
それによれば、少子高齢化の傾向が今後も続く見通しが示されていました。


朝日新聞」1月31日朝刊



今朝の「朝日新聞」には、「結婚 子育て 高い壁」という大見出しの記事が掲載されました。女性が生涯に産む子どもの数(合計特殊出産率)が2006年の前回推計よりも上向いたものの、厳しい状況は変わらないとコメントしています。また、その厳しい状況の背景には、不安定な雇用情勢や結婚への意識の変化があると見ています。
今回の統計では、出生率の見通しが前回の1.26から1.35へ上方修正されていました。これは、30歳代半ば以降の「駆け込み出産」傾向を反映したためとしています。
今後は、出産可能な女性の人口が減少していきます。
そのため、出生率が大幅に改善しない限り、子供の数は増えません。
不安定な雇用状況が続いていることも、結婚・出産への高い壁になっています。



記事の中で、男性向けマナー講座を開くNPO法人「花婿学校」代表で、自治体の結婚対策事業にもかかわる大橋清朗氏は出生率の低迷は今後も続くとした上で、「子育てにはお金がかかるため、収入の少ない若い世代には負担が大きい。子育てをすると金銭的なメリットを受けられるような仕組みをつくらないと、今後も子どもを産み育てる若者は増えないのではないか」と述べています。
この意見には大賛成ですが、わたしは大橋氏の別の発言に強い興味を持ちました。
大橋氏は、若者をとりまく社会環境の変化を指摘し、次のように述べています。
「結婚して子育てするのが当然という意識は薄れ、結婚へのプレッシャーも弱まっている。インターネットの普及で、ツイッターやSNS(交流サイト)などコミュニケーション方法も多様に。生身の異性と1対1で付き合わなくても寂しくなくなった」



わたしは、今ちょうど『SQ 生きかたの知能指数』ダニエル・ゴールマン著、土屋京子訳(日本経済新聞出版社)という本を読んでいます。
その本の内容と大橋氏のコメントがリンクしました。
「こころの知能指数」としてのEQと並ぶ「生きかたの知能指数」としてのSQの重要性を説く著者のゴールマンは、常にiPodやウォークマンのイヤホンを耳にさし、すれ違う通行人には無関心なニューヨークの人々について、次のように書いています。
「iPodをつけている人に言わせれば、両耳のイヤホンを通じて歌手やバンドやオーケストラとつながっている、ということになるかもしれない。たしかに、本人の鼓動は耳から聞こえてくる音楽と一体のリズムを刻んでいるのかもしれない。
けれども、両耳でつながっているだけのバーチャルな相手は、自分のすぐそばに現実に存在する人々とは何の関係もない。音楽に恍惚となっている当人は、そうした現実世界に存在する人々にはほとんど無関心だ。
テクノロジーによる日常生活の侵略が進んで人々がバーチャルな現実に引きこまれれば、それだけ自分の周囲に存在する生身の人間に対して無感覚になる。こうした社会的自閉状態から、テクノロジーによる想定外の副作用が次々に生じてくる」



ゴールマンのいう「テクノロジーによる想定外の副作用」からは、先日読んだ『事実婚 新しい愛の形』渡辺淳一著(集英社新書)の次のくだりを思い出しました。
「愛の巨匠」とも呼ばれている作家の渡辺淳一氏は、次のように述べています。
「女性のエクスタシーは、やはり愛する男性と接し、優しく愛撫されたときにのみ得られるもので、一人で満たされることは少なく、満たされても虚しくなる。
だが男は、自慰だけで充分、満たされる。
しかも現在は、男が性的に興奮する画像や音声が、ビデオではもちろん、さまざまなウェブサイトにもあふれている。今、多くの男性は、これらの画面や音声をひそかに見聞きしながら、オナニーに耽っているようである」



わたしには、この渡辺氏およびダニエル・ゴールマンの著書の内容と「朝日」の記事での大橋氏のコメントがつながっているように思えてなりませんでした。
ブログ『エコエティカ』でも紹介しましたが、「技術連関」という言葉があります。
倫理学者の今道友信氏は、現代社会の特色は「技術連関」にあると述べています。
人間と自然の間に機械が介在したことによって生まれた新しい環境のことです。
昔は自然のみが環境でしたが、今は自然の他にもう1つ環境があります。
つまりアスファルトや軌道や電車、信号機、携帯電話、コンピューターのように、一連の技術的な環境、つまり技術の連関が認められる。技術連関が環境になっていると考えなければなりません。そして、その技術連関とはどういうものかといえば、それによって人間が生活を便利にすることのできる、一つの体系であると考えればよいでしょう。
「技術連関」という言葉を使えば、全世界のどのような社会にも当てはまると言えます。
そして、現代日本少子高齢化にも携帯電話やスマートフォンやiPodといった新しいテクノロジーが大きな影響を及ぼしていることは疑いの余地がないでしょう。
今後は、「結婚」「出産」「子育て」の壁を低くし、少子化を解消していく上で、この「技術連関」の視点は欠かせないと思います。



少子高齢化」と言われ始めてから、どれぐらいの時間が経過したでしょうか?
「人は老いるほど豊かになる」と信じるわたしは、社会の「高齢化」はわりと肯定的にとらえています。しかし、やはり「少子化」は大きな問題であると思っています。
本業である結婚式も減りますしね(苦笑)。わたしも、これまで「高齢化」については色々と発言してきましたが、今後はぜひ「少子化」についても考えをまとめてみたいです。
わたしたちは、無縁社会を乗り越え、有縁社会を再生しなければなりません。
そのためには、「孤独死」の問題だけでは片手落ちです。
「晩婚」や「非婚」の問題も解決しなければならないと痛感しています。
日本人は、なぜ結婚しにくくなったのか? 
その謎を解くために、これから「負け犬」「事実婚」「不倫」「草食系」「恋愛下手」そして「相性」などのキーワードをもとに考えていきたいと思います。


2012年1月31日 一条真也