となりびと

一条真也です。

わたしは、「となりびと」という言葉をよく使います。
「むすびびと」と同じく、わたしの造語です。
「となりびと」とは、読んで字のごとく「隣人」のことです。
いま、多くの人々が人間関係に悩んでいますね。
わたしたちが生きる社会において最大のキーワードは「人間関係」ではないでしょうか。
社会とは、つまるところ人間の集まりです。
そこでは「人間」よりも「人間関係」が重要な問題になってきます。
そもそも「人間」という字が、人は1人では生きていけない存在であることを示しています。人と人の間にあるから「人間」なのです。
だからこそ、人間関係の問題は一生つきまといます。



夏目漱石の『草枕』には、「智に働けば角がたつ。情に棹されば流される。意地を通せば窮屈だ。とにかく人の世は住みにくい」という言葉が冒頭に出てきますが、これは人間関係の難しさを見事に表現しています。
いくら人間関係というものが難しくても、わたしたちは1人では生きていけません。
誰かと一緒に暮らさなければなりません。
では、誰とともに暮らすのか。まずは、家族であり、それから隣人ですね。
考えてみれば、「家族」とは最大の「隣人」かもしれません。



現代人はさまざまなストレスで不安な心を抱えて生きています。
ちょうど、空中に漂う凧のようなものです。そして、凧が安定して空に浮かぶためには縦糸と横糸が必要ではないかと思います。
縦糸とは時間軸で自分を支えてくれるもの、すなわち「先祖」です。
この縦糸を「血縁」と呼びます。
また、横糸とは空間軸から支えてくれる「隣人」です。
この横糸を「地縁」と呼ぶのです。
この縦横の2つの糸があれば、安定して宙に漂っていられる、すなわち心安らかに生きていられる。これこそ、「幸福」の正体ではないかと思います。
そんなことを考えて、わたしは『先祖とくらす』という本を書き、近く上梓する予定です。
また、隣人については、「隣人祭り」のお手伝いを積極的にしていますが、これも近いうちに一冊の本を書き下ろします。



それに先立ち、わが社では『となりびと 〜サンレー隣人ハートフルエピソード集』というブックレットを刊行しました。
昨年4月1日から9月15日まで、わが社では「隣人との心のふれあい・助け合い」「隣人関係における心温まるエピソード」をテーマに体験談を募集したところ、全国から600を超えるご応募をいただきました。
むすびびと〜こころの仕事』(三五館)でお世話になった作家の東多江子さんをはじめとした選考委員にて厳正な審査の結果、大賞1編、優秀賞1編、佳作3編、入賞3編を選ばせていただきました。改めて、ご応募下さった皆様に心より御礼を申し上げます。
そして、これらのエピソードを多くの方々に伝えたいとの思いから、このたび1冊のブックレットにまとめさせていただきました。
どのエピソードも素晴らしく、隣人との心の交流を通じて、人として生きる上で一番大切な「思いやり」や「感謝」の心が胸に迫ってきます。



このブックレットは、サンレーグループの諸施設に置いています。
また、このブログを読まれた方が希望されるなら、無料でお送りいたします。
ご希望の方は、わたしの公式サイト「ハートフルムーン」のメールをお使い下さい。
どうぞ、ふるってご応募下さいね。お待ちしています!


                  隣人は「こころ」の横糸です

2010年2月27日 一条真也