幸福の測り方

一条真也です。

鳩山由紀夫首相が、国民の「幸福度調査」を実施することを決めたそうですね。
おお、「友愛」の次は「幸福」!
わたし的にはテイストに合うのですが、先日の東京自由大学いのちを考えるゼミ」での海野和三郎先生の発言を思い出しました。
海野先生は、「鳩山首相の発想は一般人よりも高次元にある」という佐藤優氏のコメントを紹介した後、自分もそうかもしれないと思うと述べられたのです。
「兄弟愛」もままならない人に「友愛」が説けるのかという疑問はありますけれども、「幸福度調査」というアイデア自体は悪くありませんね。
たしかに次元の高い発想かもしれません。

                      幸福とは何か


この発想の背景には、「GNH」という考え方があります。
グロス・ナショナル・ハピネス、つまり、「国民総幸福量」という意味です。ブータンの前国王が提唱した国民全体の幸福度を示す尺度で、世界的に注目されています。 
「GNP(国民総生産)」で示されるような「物質的豊かさ」を求めるのではなく、「精神的豊かさ」、すなわち「幸福」を求めるべきであるという考えから生まれたものです。
ブータンは経済的、物質的には世界でも最も貧しい国の一つですが、国民のなんと9割以上が「自分は幸福だ」と感じているといいます。驚くべき数字ですね。
ブータンは世界で唯一のチベット仏教を国教とする国であり、葬儀を中心とした宗教儀礼が非常に盛んなことで知られます。そのせいか、ブータンの人々は良い人間関係に恵まれているようです。人間関係の良好さが幸福感に直結しているのです。

わたしは、どんなにお金や社会的地位や健康に恵まれていても、人間関係に恵まれなければ、その人はやはり不幸だと思います。
現代人はさまざまなストレスで不安な心を抱えて生きています。
ちょうど、空中に漂う凧のようなものです。
そして、凧が安定して空に浮かぶためには糸が必要です。
さらに安定して空に浮かぶためには縦糸と横糸が必要ではないかと思います。
縦糸とは血縁です。時間軸で自分を支えてくれる「先祖」です。
また、横糸とは地縁です。空間軸から支えてくれる「隣人」です。
この二つの糸があれば、安定して宙に漂っていられる、すなわち心安らかに生きていられる。これこそ、人間にとっての真の「幸福」の正体ではないかと思います。
ブータンの人々は宗教儀礼によって先祖を大切にし、隣人を大切にして人間関係を良くしている。だから、しっかりとした縦糸と横糸に守られて、世界一幸福なのです。

日本人の「幸福度調査」を本気で行うなら、その人が先祖供養をきちんとしているか、また隣人と仲良く暮らしているか、この二つをぜひ調査すべきだと思います。
 

2010年3月15日 一条真也