『銀河鉄道と星の王子』

一条真也です。

小学5年生の次女が通っている小学校から、「親が子どもに読ませたい、一緒に読みたい本」というアンケートが来ました。
父兄からアンケートを募り、審査の結果、100冊を選んで学校図書館に収めるのだそうです。そこで、ここ数日いろいろ考えましたが、わたしが子どもに最も読んでほしいのは次の2冊だと思い至りました。
宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』とサン=テグジュペリの『星の王子さま』です。


                 最も子どもに読ませたい本


どちらも、人類の「こころの世界遺産」とも呼ぶべき素晴らしい本だと思います。
著書『涙は世界で一番小さな海』(三五館)にも2冊について書きましたが、どちらも「幸福」と「死」を考えるための童話だと思います。
子どものみならず、大人のための童話でもあります。
また、わたしにとっての最大の愛読書でもあります。
そして、2冊の接点を論じた『銀河鉄道と星の王子』高波秋著(ジャン・ジャック書房)という本を再読しました。


                  二つのファンタジーの接点


この本は、岩手県は花巻の「宮沢賢治記念館」で求めました。
ここは以前にも訪れていましたが、『涙は世界で一番小さな海』の執筆にあわせて、昨年の3月に再訪したのです。
その前年、2008年の9月には箱根の「星の王子さまミュージアム」も訪れました。
わたしも以前から、『銀河鉄道の夜』と『星の王子さま』の両作品は似ているなと感じていました。

それは、ともに星々をめぐる物語だということもあります。
でも、それ以上に共通しているのは、「利他」の精神というものをコンセプトとした物語だからかもしれません。
「利他」の精神は美しいですが、悲しいものでもあります。
この二つの作品に共通する特徴は、「悲しみ」の色がもやのように立ちこめていることだとして、著者の高波氏は次のように書いています。
「朝日が昇っても、日が沈んでも風が吹いても、人や動物がさびしげに行き来し、主人公たちは、理由もなく、『悲しい』と口にします。しかし、作品は、それぞれの作者の、いくつもの層を持つ、心の世界です。ことばを通して、その世界に入って、読み返し、心に反芻していると、作品の、別の層が、いつとなく、読者の心に現れて来ます。作品の奥に、隠れていたものの匂いを、感じた、と思うのは、そのときです。それを、きっかけとして、身の回りの、もやに、光が差し込んできます。サラサラと鳴る風の音が、いつのまにか、しずかな音楽となって、広がっています。同じファンタジーが、こんどは、別の世界のように、明るく展開してゆきます。幸福を求める、二人の作者の、熱い思いが、作品のウラに、表れようとしているのです。」
ちょっと句読点が多すぎて読みにくいですが、言わんとすることは何となくわかります。
著者はまた、「(まえがき)ファンタジーに入る」で、「友情と愛は、すべての人が、いつでも、入ってゆきたいとねがう、温かい、静かな心。その心への道すじを、手に取るように教えてくれるのが、宮沢賢治サン=テグジュペリです」とも書いています。
これは、まったく同感ですね。
わたしは、宮沢賢治サン=テグジュペリの二人を心から敬愛しています。
機会があれば、また花巻と箱根を訪れてみたいです。


                宮沢賢治記念館(花巻)にて

                   銀河鉄道の停車場で

              星の王子さまミュージアム(箱根)にて

                   王子さまとともに


2010年5月1日 一条真也