青いバラ

一条真也です。

わが家の庭には紫色のバラも咲いています。
この花の名前は、ブルーローズというそうです。
パープルローズではなく、ブルーローズ。



なぜ、紫色のバラを「ブルーローズ」と呼んできたかというと、多くの人々が青色のバラを求めるがゆえに「紫」を「青」と言い換えてきたのです。
ですから、青いバラは、一般的には紫のバラということになります。
切花でも流通量が少ないほうだそうで、その品種は思ったよりも結構あります。
それでも、2万品種におよぶバラの中では5%にも満たないとか。
これは、本当の青いバラではなく、あくまでも紫のバラの話ですよ。



古代から、人類はずっと青いバラを求め続けてきました。
長い間、青いバラは世界中のバラ愛好家にとっての見果てぬ夢でした。
なにしろ、英語の「ブルーローズ」には「不可能」という意味があるのです。
ギリシャローマ神話が生まれた頃には、青いバラがないことがすでに知られていたといいます。また『アラビアンナイト』では、青いバラは「愛」や「幸福」のシンボルでした。



なぜ、そこまで人類は青いバラに憧れたのでしょうか。
ドイツのロマン主義作家ノヴァーリスに『青い花』という名作があります。
「理想」を求めて旅に出る青年ハインリヒの物語です。
その『青い花』の影響を受けて書かれたファンタジーをご存知ですか。
かのメーテルリンクの戯曲『青い鳥』です。
チルチルとミチルの兄妹が「幸せ」を追求する物語ですね。
花にしろ、鳥にしろ、青いものをさがす旅とは、「理想」や「幸せ」を求める旅なのです。
そして、それは人間の内面への旅に他なりません。
ドイツの神秘哲学者シュタイナーは、青は人間の「こころ」の色であると述べています。



しかし、ついに日本のサントリーフラワーズと、オーストラリアの植物工学企業のカルジーンパシフィック社(現フロリジン社)との共同研究開発により、世界で初めての青色色素を持ったバラが2004年に誕生しました。
これまで「不可能」が花言葉であった青いバラ
いま、青いバラは「奇跡」という新たな花言葉を得たのです。
そろそろ、生花店の店頭にも神秘的な青いバラが並ぶのではないでしょうか。


2010年5月8日 一条真也