『ネットの炎上力』

一条真也です。

東京に来ています。
新橋での全互協の理事会が終了した後、四谷の三五館を訪ねました。
そこで、「隣人」をテーマとした次回作について打ち合わせをしました。
それから、星山佳須也社長に青海苔鍋という珍しい料理を御馳走になりました。
ヘルシーで、とても美味しかったです。
別れ際、星山社長から「必ず、三五館から一条真也の大ベストセラーを出しましょう!」と四谷の路上で言っていただきました。
わたしには、「出版界の丹下段平」による「出せ、出せ、出すんだ、(イチ)ジョー!」の雄たけびに聞こえました。がんばります!



さて、『ネットの炎上力』蜷川真夫著(文春新書)を読みました。
著者は、朝日新聞社で社会部記者、海外特派員、「AERA」編集長、インターネット・キャスター、テレビのキャスターやコメンテーターなどを経験するという輝かしいキャリアの持ち主です。現在は株式会社ジェイ・キャストを設立し、Webサイト「J−CASTニュース」の発行人として知られています。


               ネット空間のまったく新しいビジネスモデル


現在は高度情報社会です。
ピーター・ドラッカーは、早くから社会の「情報化」を唱え、後のIT革命を予言しました。
ITとは、インフォメーション・テクノロジーの略です。
ITとは、I(情報)とT(技術)から成り立っているのです。
先に読んだ『インターネット新世代』村井純著(岩波新書)が“T”についての本だとしたら、こちらは“I”についての本といえるでしょう。
どうすればWebサイトに多くのアクセスを集められるかというノウハウが、実際の経験を元にして詳細に語られています。
わが社のHP、小生のHP,また当ブログの運営においても多大なヒントがありました。
新聞とテレビにニュースを求めていた日本人も、いまやインターネットという新たなニュースメディアを持ちました。
若者をはじめ、ネットに頼る比率は高くなる一方です。
その中で、ヤフーとグーグルは巨人というべき存在になっています。
両者とも、新聞社や通信社などのニュースや情報を発信しています。
インターネットの利用者の大半が、ニュースを見たり、情報を検索したりするとき、この両巨人を使っています。
わたしが連載している「毎日@葬儀 風のあしあと」の主催は日本一のニュースサイトである「毎日JP」ですが、同サイトですら、ヤフーとニュース配信で提携しているのです。



著者は、次のように述べます。
「インターネットとはどういうメディアなのだろう。新聞やテレビ、雑誌とどこが違うのだろうか。急速に膨張したインターネットを目の当たりにして、ある人は『怪物』『魔物』だといい、ある人は『希望』『革命』だという」
そして、「私は、どちらの見方も正しいと思っている」と言います。
かつての伝説の雑誌「噂の真相」をも彷彿とさせるゲリラ性を持った「J−CASTニュース」は、これまで社会現象とも呼べるほどの「ネット炎上」を引き起こした数々のニュースを取り上げてきました。
いわく、皇室のプライベート写真、政権交代から、上村愛子のブログ炎上、「くまぇり」と「きっこ」、サイバーエージェントが開始した婚活女性向けの携帯サイト「男の子牧場」、オナニーマラソンリア・ディゾンの局部、果ては「六本木のレストランで豚を獣姦し、その後食べた」という英文の変態記事まで。
多大なアクセスを呼び込むニュースには、どうしてもスキャンダル性があるのです。
こういった一見バカバカしいニュースも含め、ネット炎上を起こした一連のニュースを見ると、一般大衆の関心とか欲望の対象が浮き彫りになってくるような気がします。
それにしても、「朝日新聞」という、いわばマスメディアの王道を歩んできた著者が、かの「2ちゃんねる」の記事をニュースソースとして取り上げ、ある意味で評価もしているというのは意外でした。

2010年5月19日 一条真也