新緑読書

一条真也です。

鹿児島に来ています。
城山観光ホテルから見える桜島が美しいです。わたしが業界で最もリスペクトする経営者の1人である㈱117の山下裕史社長と朝食をともにしました。葬式をはじめとする冠婚葬祭の意義についての意見を交換し、たいへん有意義な朝となりました。

その後、一昨日送られてきた「中外日報」を読みました。
仏教を中心とした日本最大の宗教新聞です。
新聞記者時代の司馬遼太郎直木賞受賞作『梟の城』を連載したことでも知られます。
明治30年の創刊ですから、もう113年も刊行されています。

全国の寺院では、ほとんど同紙を購読しているそうです。
神社関係者や新宗教関係者にも読んでいる人が多いです。
数日前、同紙の役員の方から連絡があり、拙著『葬式は必要!』(双葉新書)を読んで感銘を受けたと言っていただきました。
島田裕巳著『葬式は、要らない』(幻冬舎新書)に対して、仏教界から正式な反論が出ないため、今度、同紙で「葬式」についての特集を組むそうです。
その特集へのコメントを求められました。
島田氏にもコメントを求めるとのこと。
「葬式」について議論が盛り上がるのは大いに結構なことです。


                 「中外日報」の新緑読書特集


さて、送られてきた「中外日報」は、「新緑読書特集」とのことで、多くの書籍が紹介されていました。その中に、『葬式は必要!』も取り上げられていました。
この本で、「長く日本人の葬儀や先祖供養に対する宗教的欲求を満たしてきた仏式葬儀が、一種の制度疲労を起こしている」などと書きました。
そのため、仏教界のオピニオン・ペーパーである同紙からは反論されるかなと思っていたのですが、意外とそうでもありませんでした。
「葬式無用論に警鐘」「死の『かたち』問い直す」と紹介してくれています。懐の深さを感じるとともに、仏教界自身も現在の状況に危機感を抱いていることが推察できます。
最後には、「古来、人類は『葬式』という『かたち』の持つ力によって『死』を受け入れてきた。死の儀式を通して人と人とのきずなを確かめ深めてきた。その営みが人間存在の本質に根差すものであることを改めて考えさせられる」と結んでいただきました。
この紹介記事によって、一人でも多くの仏教関係者が『葬式は必要!』を読んで下さることを願っています。



それにしても、「新緑読書特集」とは、良い言葉です。
同紙を開いて眺めてみると、『ダライ・ラマの『中論』講義』『大師はいまだおわしますか』『親鸞蓮如』『禅の逆襲』『日本人の一生』『親と子の心の解決集』『IT時代の宗教を考える』など、面白そうな本がずらりと並んでいます。
特集のイントロダクションが、また格調高くて素晴らしい!
あまりに素晴らしいので、以下に全文を紹介いたします。
「木々の緑が、日々にみずみずしさを増すこの季節。天地にみなぎる浩然とした気と陽光を一身に浴び、一木一草が薫風と遊びそよいでいる。そんな新緑と薫風を感じながら読書に親しむのも、この季節ならではの楽しみだろう。漢代から宋代の詩文を集めた中国の詩文集『古文真宝』に、『家を富ますに良田を買うを用いず。書中おのずから千鐘(せんしょう)の粟(ぞく)あり』とある。家を富ませるのに肥えた美田を買う必要はない、本の中にたくさんの実りがあるではないか。というほどの意味で、同じく古文真宝には、『書を読めば万倍の利あり』ともある。良書を読み、心の緑もみずみずしくしたい。」



この文章を書いた人物は、年配の方でしょうか。
年齢はともかく、かなりの教養の持ち主に違いありません。
「書を読めば万倍の利あり」とは良い言葉です。
『古文真宝』そのものを読みたくなりました。
たしか、実家の書庫である「気楽亭」に置いてある明治書院の「新釈漢文大系」の中にあったように記憶しています。
また、「心の緑」とは、なんと素敵な言葉でしょうか!
わたしも、心の緑をみずみずしくしたいものです。
緑といえば、『葬式は必要!』は、まさに新緑の色。
これから、福岡に向かい、NHK福岡スタジオで討論番組に出演します。
そこで、島田裕巳氏ともお会いする予定です。
なんとか、新緑カラーの本が多くの方々に読まれることによって、「心の緑」が世の中に広まればいいのですが。
それでは、行ってきます!


2010年5月26日 一条真也