『センス・オブ・ワンダー』

一条真也です。

東京に来ています。
日本橋三越本店で「出版寅さん」こと内海準二さんと待ち合わせし、「月の織姫」こと築城則子先生の受賞作品が展示されている日本伝統工芸展を見ました。
築城先生の作品「面影」は人気が高く、その前には多くの人だかりができていました。
ご本人にもお会いできて良かったです。
その後は銀座に向って、新装オープンなった銀座三越をながめた後、「美の商人」こと大川原有重さんと合流し、3人で夕食を共にしました。大川原さんは、昨日のブログで拙著『ご先祖さまとのつきあい方』(双葉新書)を紹介してくれています。
また大川原さんには、大変おいしいスペイン料理をごちそうになりました。
スペイン料理の世界大会でパエリアが優勝した「エスペロ」というお店でした。
ワインを飲みながら、さまざまな話題で会話も盛り上がりました。
大川原さんが「アポロは絶対に月に行っていない」と信じておられるのが印象的でしたが、今日のブログにもそのことが書かれていました。



月といえば、昨夜の天川で見上げた「中秋の名月」の美しさには感動しました。
それから、吉野の山を揺らすほどの朝の雷には驚かされました。
自然は驚異に満ちている・・・・・そのことを天川で改めて痛感しました。
天川から京都へ向う道すがら、わたしは持参してきた『センス・オブ・ワンダーレイチェル・カーソン著、上遠恵子訳(新潮社)を読みました。
これまでに、もう何十回と読み返した本です。


               子どもたちへの一番大切な贈りもの


著者のレイチェル・カーソンは、海洋生物学者でもあったアメリカの女流作家です。
環境の汚染と破壊の実態を世界にさきがけて告発した『沈黙の春』の著者として知られていますが、人生最後のメッセージとして『センス・オブ・ワンダー』という、すばらしい小著を残しました。
美しいもの、未知なもの、神秘的なものに目を見張り、人間を超えた存在を認識し、おそれ、驚嘆する感性、すなわち「センス・オブ・ワンダー」を育んで、かつ強めていくことの意義をおだやかに説いた本です。


カーソンは言います。地球の美しさと神秘を感じとれる人は、科学者であろうとなかろうと、人生に飽きて疲れたり、孤独にさいなまれることは決してない、と。たとえ生活のなかで苦しみや心配ごとに出会ったとしても、必ずや、内面的な満足感と、生きていることへの新たな喜びへ通じる小道を見つけ出すことができる、と。
そして、地球の美しさについて深く思いをめぐらせる人は、生命の終わりの瞬間まで、生き生きとした精神力を保ちつづけることができるとして、彼女は次のように語ります。
「鳥の渡り、潮の満ち干、春を待つ固い蕾のなかには、それ自体の美しさと同時に、象徴的な美と神秘が隠されています。自然がくりかえすリフレイン――夜の次に朝がきて、冬が去れば春になるという確かさ――のなかには、限りなく私たちを癒してくれる何かがあるのです」



わたしが最もセンス・オブ・ワンダーを感じるのは、何と言っても、皆既日食です。
昨年2009年にも見られましたね。
なぜ、皆既日食が起こるかといえば、太陽と月がぴったりと重なるからです。
つまり、地球から眺めた太陽と月の大きさは同じなのです。
人類は長いあいだ、このふたつの天体は同じ大きさだとずっと信じ続けてきました。
しかし、月が太陽と同じ大きさに見えるのは、月がちょうどそのような位置にあるからに他なりません。月の直径は、3476キロメートル。太陽の直径は、138万3260キロメートル。つまり、月は太陽の400分の1の大きさです。
次に距離を見てみると、地球から月までの距離は、38万4000キロメートル。地球から太陽までの距離は、1億5000万キロメートル。この距離も不思議なことに400分の1なのです。こうした位置関係にあるので、太陽と月は同じ大きさに見えるわけです。
それにしても、なんという偶然の一致!
この「あまりにもよくできすぎている偶然の一致」を説明する天文学的理由はどこにもありません。月がUFOのような人工の天体であり、何者かが月を一定の速度と位置に正確に保つようにしているとでも考えなければ、この謎はどうしても解けないのです。
こんな驚異が、どこにあるでしょうか!


皆既日食のみならず、宇宙は、そして地球は驚きに満ちています。
月の満ち欠けを見るたびに、天からの贈り物である雨や雪に、また庭の花々が咲き誇る姿に、自然にふれるという終わりのない喜びを感じています。
太陽と月、大地と海、そして驚きに満ちた生命たち・・・・・・・センス・オブ・ワンダーさえあれば、世界はいつも輝いているのです。


2010年9月24日 一条真也