孔子との対話

一条真也です。
東京都文京区の湯島に行ってきました。
池袋からJR山手線で西日暮里まで、そこから千代田線で湯島まで行きました。
すぐ近くには東京大学のある本郷もあり、非常にアカデミックな雰囲気の土地です。
実際、文京区は江戸時代から「昌平坂学問所」を中心に学問のメッカでした。
江戸時代から多くの文人たちが暮らしたことでも知られています。
古くは松尾芭蕉滝沢馬琴、そして明治の時代からは坪内逍遥森鴎外夏目漱石樋口一葉石川啄木といった数多くの作家や詩人たちがこの地に集い、日本人の「こころ」に多大な影響を与えた多くの名作を世に送り出してきました。


                       湯島天神

                       神田明神

                       湯島聖堂



わたしは、まず湯島天神を訪れました。
それから、神田明神を経て、湯島聖堂を訪れました。
湯島には、じつに宗教施設が多いのことに気づきました。
そして、それと同時にラブホテルも多いことに気づきました。ブログ「波の上ビーチ」にも書いたように、「聖地」とは「性地」に通じるのかもしれません。



湯島聖堂は、もともと江戸幕府直轄の教育施設だった昌平坂学問所です。
江戸時代の儒学興隆の礎を築いた儒者である林羅山が上野に開いた私塾を源流とし、多くの人材を輩出しました。
羅山は上野の私塾に孔子廟を設けて、その祭祀を行いました。その維持管理は代々の林家当主(大学頭)が継承しましたが、1690年(元禄3年)に時の将軍であった徳川綱吉がこの孔子廟を神田湯島に移築することを命じました。
このとき、講堂や学寮が整備され、この地は孔子の生地である「昌平郷」にちなんで「昌平坂」と命名されたのです。


                       孔子像を望む

                       巨大な孔子


湯島聖堂には巨大な孔子像も建てられ、孔子を敬愛するわたしも時々訪れます。
今日も、孔子の顔を見上げながら色々と考えました。心の中で、孔子と対話しました。
ちょうど、いま、某大手出版社から『世界一やさしい論語の授業』という本を書かないかという話が来ています。
まだ正式には決定していないのですが、ぜひ書いてみたいテーマではあります。
ましてや、わたしは北陸大学で150名にもおよぶ中国人留学生たちを相手に「孔子研究」の授業を担当しています。
「中国人に論語を教える唯一の日本人」などと呼ばれることも多くなりました。


                孔子様、中国は一体どうしたのですか?

                     孔子と対話しました

                9月24日付「朝日新聞」夕刊より


しかしながら、現代の中国には「仁」も「礼」もまったく感じられません。
最近の尖閣諸島の問題にしても、国際常識を疑うばかりです。
また、旧・琉球王国宗主国が明であったという歴史的事実を持ち出して、沖縄は中国の領土であるなどと暴論を打ち出す始末です。
さらには昨夜、尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件が起きて以降、初めて中国側が日本人を拘束したという衝撃的なニュースが、今日の各紙の夕刊で報道されています。



中国人は、いまこそ、『論語』を読むべきであり、「社会の中で、いかに個人が幸せに生きるべきか」を追求した孔子の思想を学ぶべきでしょう。
そんなことを考えながら、孔子像をずっと見つめていました。
わたしの心には「義を見てせざるは勇なきなり」という孔子の言葉が浮かんできました。
ちょうど今日、『140字でつぶやく哲学』(中経の文庫)も脱稿しましたし、こうなったら、中国の若者に読ませるための論語入門を本当に書こうかなあ。


2010年9月24日 一条真也