「クロサワ映画」

一条真也です。

日本映画「クロサワ映画」を観ました。
「クロサワ」といっても、「世界のクロサワ」こと黒澤明監督とは何の関係もありません。
「クロサワ」というのは、女性お笑いトリオ「森三中」の黒沢かずこのことです。
そう、この映画は吉本興業が製作したハートフル・コメディなのです。


ネットでの評価が非常に高いのと、「アラサー女性の婚活」をテーマしているというので興味を抱いて観たのですが、いやはや、大変な名作でした。大いに泣かされました。
ストーリーはドンデン返しに次ぐドンデン返しなので、何を書いてもネタバレになってしまいます。ただ、女芸人さんの「笑い」にかける根性には頭が下りました。



わたしは「T・ジェイリバーウォーク北九州」で観たのですが、ちょうど日曜日ということで、「福岡よしもと」から芸人さんが舞台挨拶に来ていました。
自衛隊員のコンバット満という人でした。
彼は劇場に入るなり、まず観客の少なさに呆然としていました。
そのとき、わたしを入れても15人いるかいないかくらいだったのです。それでも、彼はネタを次々に繰り出して、しっかり10分ほどの挨拶で笑いを取っていました。
わたしも気が乗らないときでも、訓話とか講演をしなければならないこともありますが、笑いまで取るというのは、やはりプロは凄いですね。


この映画でも、どんなに辛いとき、悲しいときでも、ひたむきに笑いを取ろうとする芸人さんたちのプロとしての姿が描かれていました。
そこには男の芸人さんでも悲哀があるわけですから、女芸人さんでは尚更です。
でも、この映画に出てくる黒沢かずこをはじめとした森三中椿鬼奴光浦靖子大久保佳代子などの女芸人たちは、すべてを笑いで吹き飛ばそうとします。
特に黒沢かずこには、あまりにも過酷な運命が待っています。それはもう観ていて、こちらが切なくなるほどですが、深い悲しみさえ笑いで吹き飛ばす姿勢には感動しました。
わたしは、人生を生きる上で「笑い」は不可欠のものだと思いました。
特に、拙著『人間関係を良くする17の魔法』(致知出版社)では、17の魔法のひとつに「笑い」を入れましたが、真面目な内容の本にいきなり「笑い」が出てくることに違和感を覚えた読者もいるようです。しかし、この映画を観て、「笑い」を魔法に加えたことは間違っていなかったと再確認しました。人は、笑いによって人間関係を良好にできるのです。



この映画を観て、「お笑い」という世界にいかにアイデアが求められるかを痛感しました。まさに、ドラッカーが述べたような知識集約型産業そのものです。
また「お笑い」が、いかに人の「こころ」を読み取り、人の「こころ」にエネルギーを与えられるかを思い知りました。まさに精神集約型産業であり、わたしたちの冠婚葬祭業にも通じるハートフル・ビジネスです。
ところで、この映画は吉本がフジテレビと組んでいますが、今度はテレビ東京と組んで映画を作ったようです。そのタイトルは「お墓に泊まろう!」といいます。


今日、映画館で入手したチラシには、次のように書いてありました。
「地デジへ完全以降した2011年、テレビ東京が倒産した。そして・・・テレビ東京は、葬儀屋に買収された。多くの社員が去った。放送も1日3時間になり、葬儀の手伝いばかりの毎日・テレビ東京のバラエティに憧れて入社したばかりの今井(金田哲)は、変わり果てた会社に絶望していた。そして最も哀しかったのは・・・今井の憧れだった伊藤プロデューサーが葬儀局に異動を命じられたことだった」
今井役の金田哲吉本興業の「はんにゃ」のメンバーですが、伊藤プロデューサーの役は同じく吉本の「次長課長」の河本準一が演じます。
わたしは、このチラシとか映画の予告編を観て、どうも嫌な予感がしています。
というのも、ただでさえ偏見のある葬儀業界をことさら悪意をもって取り上げているような匂いがプンプンするからです。
もちろん、全国の系列局を含め、葬儀社や互助会のCMを大量に流しているテレビ局がそんな馬鹿な真似をするとは思えません。
それと、自らも世間の偏見と戦ってきて、今やエンターテインメント・ビジネスとしての確たる地位を築いた吉本興業がそんな映画を作るとも思えません。
わたしは互助会業界の広報委員長をしていますので、もし目に余る誹謗中傷的な表現があった場合は抗議をしなければなりません。でも、この「クロサワ映画」のような心あたたまる映画を作った吉本に限って、そんなことはないと信じたいです。
おそらく、「クロサワ映画」のように大ドンデン返しが待っているのだと信じたいです。
それにしても、自社の倒産を映画のテーマにするテレビ東京って・・・・・。


2010年10月25日 一条真也