江戸の花

一条真也です。

歌舞伎俳優の市川海老蔵が、西麻布の酒場でボコボコに殴られたそうです。
顔面血だらけで自宅に帰り、都内の病院に緊急搬送されたとか。
警視庁は、傷害事件として調べているそうです。


                  11月26日付「スポニチ」より


事件があった日は歌舞伎の製作発表記者会見がありましたが、体調不良でキャンセルしていました。それにもかかわらず酒を飲み歩いた結果のトラブルでした。
そのため、父親の市川團十郎が記者会見を開いて謝罪していました。
團十郎は、息子の様子を「負けたボクサーのようだった」と表現し、「自覚のなさによるもの。本人の責任は重い」と頭を下げました。



わたしは、歌舞伎役者の喧嘩ということが興味深かったです。
それも、暴行を受けたのが市川團十郎家のプリンスである海老蔵であるということが。
その理由をご説明しましょう。拙著『花をたのしむ』(現代書林)に書いたように、人間界の「花」といえば、役者に尽きます。
現在でも芸能人のことを「スター」などと呼びますね。
でも、かつては役者のことを「花」と呼んだのです。
江戸には3つの花がありました。
火事と喧嘩は、みなさんもよくご存知かと思います。
では、もう1つの花とは何か。それは、歌舞伎役者の市川團十郎でした。
江戸時代の江戸ッ子たちは、口々に團十郎を「江戸の花」と讃えたのです。
『明和技鑑』という本では、團十郎を役者の氏神と記していますが、とにかく「江戸の飾海老」とも「江戸の花」とも称された大スターでした。



数々の美人女優と浮名を流し、美人タレントの小林麻央と結婚した市川海老蔵
彼は、当代一のプレイボーイとされてきました。
12代市川團十郎の長男であり、おそらくは13代目となる人物ですが、まさに天性の「江戸の花」という雰囲気を持っています。その彼が喧嘩沙汰に巻き込まれた事件には、2つの江戸の花が関わっていたわけです。
わたしも大酒飲みなので、あまり偉そうなことは言えないのですが、酒もほどほどにしないといけませんね。まあ、有名人でプレイボーイとあっては、いろいろと因縁もつけられやすいのかもしれません。
でも、かわいい新妻と病身の父親を心配させてはいけませんな。
それと、役者は絶対に顔を殴られてはいけませんよ。いや、ほんとに。


2010年11月26日 一条真也