隣人の時代へ

一条真也です。

今朝の「朝日新聞」に、わたしの対談が掲載されました。サンレー創立45周年の記念ということで、2面にわたっています。ブログ「隣人対談」に書いたように、NPO法人・北九州ホームレス支援機構の奥田知志理事長を相手に10月8日に行った対談です。


朝日新聞」2011年11月5日朝刊


タイトルは、「無縁社会を乗り越えて、隣人の時代へ」。そして、サブタイトルが「北九州で育まれた『縁』と『絆』が、これからの日本を変える」というものでした。わたしが「縁」、奥田理事長が「絆」をキーワードとして、話は進められていきました。対談の内容は非常にスリリングなものとなりました。


朝日新聞」2011年11月5日朝刊


株式会社サンレーは、1966年に北九州市で誕生しました。北九州市は、いわゆる製造業の街として広く知られていますが、東日本大震災の被災者に対する積極的な取り組みでも全国的に注目されています。
東日本大震災の特徴の一つとして、多くの県外避難者が全国に散らばっていることがあります。岩手、宮城、福島の3県で、じつに約5万人近くに上るそうです。
慣れない土地では、どうしても孤立しがちになりますが、そんな被災者たちをどう支えるかが受入れる自治体の共通の課題となっています。



その北九州市では、「絆プロジェクト北九州」という試みが始動しています。奥田理事長の呼びかけに北橋健治市長が応え、住まいの提供から生活相談、就業支援まで官民協働のネットワークで被災者を支えることを目指しているのです。詳しくは、ブログ「北九州へ!」を参考にされて下さい。
現在、北九州市は「ハートフル北九州」を謳っています。その名に恥じない、思いやりにあふれた都市づくりを目指しています。このような被災者の受け入れ支援などは北九州市の得意技ではないでしょうか。全国の政令指定都市で最も高齢化の進む北九州市には、「助け合い」や「支え合い」の文化があるように思います。奥田理事長らが長年取り組んでこられた「ホームレス支援」活動は日本一の実績を残しておられます。また、わが社がサポートさせていただいている「隣人祭り」の開催回数も日本で最も多いのではないでしょうか。


朝日新聞」2011年11月5日朝刊


昨日、奥田理事長が東北の某大手企業の方と一緒に来社されました。わたしは、ぜひ、その方にわが社に入社いただきたいと思いました。わが社は、被災者の方々を前向きに雇用したいと考えています。けっして、「当社の人員は間に合っているのだけど、困った時はお互い様だから採用しましょう」ではありません。わたしは、大震災の被災者だからこそ採用したいのです。
というのは、地震津波放射能で極限の体験をされた方々にとって、その体験は「強み」となりうると思っているのです。極限の体験をされたからこそ、他人の痛みがわかる方が多いのではないかと期待しています。
冠婚葬祭の業務ももちろんですが、今後ますます重要になっていくグリーフケア・サポートのスタッフとしても期待しています。愛する人を亡くした人々に接するとき、自分自身が経験してきた「悲しみ」や「苦しみ」が、他人への共感となって、「思いやり」となり、さらには「癒し」になるのではないかと思っています。



被災者の方々のみならず、日本中の高齢者も北九州市に来ていただきたいです。現在、全国には500万人近い独居老人が分散しています。そういった方々に、ぜひ北九州に来て、余生を過ごしていただきたいのです。
高齢化先進都市である北九州市は、高齢者が多いことを「強み」として、日本一、高齢者が安心して楽しく生活できる街づくりを目指すべきだと思います。そこで、大事なポイントは「孤独死をしない」ということです。隣人祭りをはじめとした多種多様なノウハウを駆使して、孤独死を徹底的に防止するシステムを構築することが必要です。そうなれば、「北九州にさえ行けば、仲間もでき、孤独死しない」という意識が生まれます。
全国の独居老人には、どんどん北九州に移住していただきたいと真剣に願っています。



もともと、わたしは北九州市を「高齢者福祉特区」にするべきだと訴えてきました。
そして「人は老いるほど豊かになる」というコンセプトに基づく「老福都市」をイメージし、そのモデルとして高齢者複合施設「サンレーグランドホテル」を北九州市八幡西区に作りました。いわゆるセレモニーホールと高齢者用のカルチャーセンター、スポーツクラブ、ミュージアムなどが合体した前代未聞の施設として大きな話題になりました。「老い」と「死」に価値を置く施設であるサンレーグランドホテル北九州市に誕生したことは多くの方々から評価されました。なぜなら、高齢化が進む日本の諸都市、世界各国の都市にとって北九州市とは自らの未来の姿そのものだからです。こういった考え方も、すべてドラッカーの「強みを生かす」という思想をベースにしています。



わたしは、北九州市は「老福都市」を、「助け合い都市」を、そして「隣人愛都市」を目指すべきだと確信します。平たく言えば、それは「社会福祉都市」ということになるかもしれません。そんな都市が日本にできるなんて素敵ではありませんか!
ぜひ、被災者の方々は安心して北九州に来ていただきたいと思います。また被災者のみならず、独居老人でも、どんな方でも結構です。日本のどこかで困っておられる方、これからの人生に不安を抱いている方がおられたら、ぜひ北九州へ来ていただきたいです。


朝日新聞」2011年11月5日朝刊


このたび、わが社は高齢者介護事業に進出しました。
この対談でもそのことについて触れられ、「隣人館」のイメージパースも紹介されていました。隣人館は、ずばり絶対に孤独しないための有料老人ホームです。
住居費・食費・光熱費などがすべて年金の範囲内に収まる夢の高齢者専用賃貸住宅の建設を予定しています。いよいよ、社会福祉都市であり相互扶助都市としてのハートフル・シティ建設をめざすサンレーグループの新たな旅路の始まりです! 「人間尊重」を掲げるサンレーの「天下布礼」は大きく前進します。



それにしても、魂の同志と思っている奥田知志理事長との対談が実現して、わたしは本当に嬉しかったです。牧師である奥田理事長は、ずっとホームレスの支援活動に情熱を傾けてこられ、今また被災者の支援活動に命をかけています。あの茂木健一郎さんも、自身のブログ「クオリア日記」の「奥田知志さん」という記事で、奥田理事長のことを「なんと温かい、素晴らしい人」と絶賛しています。NHKの「無縁社会」番組でも常に前向きに具体的な提言をされ、浄土宗や日本生命などの講演では、「助け合い社会」の実現を訴えられています。北九州に奥田理事長のような「隣人愛の実践者」がおられることを、わたしは心から誇りに思います。


無縁社会バスターズ」を結成しましょう!


奥田理事長、このたびは本当にありがとうございました。
これからも、どうぞ、よろしくお願いいたします。
この世はさまざまな「縁」で満ちあふれており、もともと「有縁社会」です。
無縁社会」など、実体のないお化け=ゴーストのような存在なのです。奥田理事長、ぜひ一緒に「ゴーストバスターズ」ならぬ「無縁社会バスターズ」を結成しましょう!


2011年11月5日 一条真也