「テルマエ・ロマエ」

一条真也です。

日本映画「テルマエ・ロマエ」を観ました。ブログ『テルマエ・ロマエ』で紹介したヤマザキマリの人気コミックを実写映画化した作品です。
ここ数年、日本映画が非常に活気づいていますね。
現在も、ブログ「宇宙兄弟」ブログ「わが母の記」で紹介した映画などがヒットを続けていますが、最大のヒット作こそ、この「テルマエ・ロマエ」なのです。


古代ローマ帝国の浴場設計技師が現代日本の銭湯にタイムスリップしてしまうという奇想天外な物語です。アイデアが行き詰まり失業した古代ローマ、浴場設計技師のルシウスは、「テルマエ」と呼ばれる公衆浴場でタイムスリップしてしまいます。
たどり着いた場所は、何と現代日本の銭湯でした。
そこには、「平たい顔族=日本人」がいました。ルシウスは日本の風呂の文化にカルチャーショックを覚えます。そして、そこで浮かんだアイデア古代ローマに持ち帰り、次から次へと大ヒットを飛ばして一躍有名になっていくのでした。



漫画家志望の真実という女性が登場し、物語の中で重要な役割を果たします。
ルシウスと不思議な縁で結ばれる真実ですが、上戸彩が演じていました。
最初は、ものすごく「平たい顔」を印象づけるスッピン・メークでスクリーンに登場した上戸彩でしたが、その女優魂には感心しました。
古代ローマの服を着たときもよく似合っていました。
この映画は、上戸彩のファンの人たちにはサービス満点でしたね。



しかし、この映画が何よりもすごいのは古代ローマ人を日本人俳優が堂々と演じていることです。古代ローマ現代日本を往還する主人公ルシウスを阿部寛が扮し、その他にも北村一輝、宍戸開、市村正親といった日本屈指の顔の濃い役者陣が古代ローマ人に成り切っています。それも、かつての東宝の特撮大作「釈迦」に出てくる古代インド人、あるいはやはり東宝の怪獣映画「モスラ」に出てくる南海の孤島・インファント島の原住民を日本人の顔を黒く塗って演じさせたのとはレベルがまったく違います。
阿部寛も、北村一輝も、宍戸開も、市村正親も、まさにローマ人そのもの!
今年2月に本作品のローマプレミアが行われましたが、観賞した現地のイタリア人たちは「誰が日本人か分からなかった」と話したそうです。
これは、ある意味で、天下の「怪作」あるいは「珍作」と言えるでしょう。
あと数十年もしたら、この映画は「伝説のカルト映画」になるような気がします。



古代ローマを再現した大掛かりなセットも良かったです。
なんでも、ハリウッドのドラマ「ローマ」の巨大セットを丸々使わせてもらえたそうです。
それは、またラッキーな話ですね。これが日本の映画スタジオ内で作られた安っぽいセットだったら、映画そのもののチープでキッチュな雰囲気になったことでしょう。
濃い顔の日本人俳優陣とハリウッドの巨大セットによって、世にも不思議な古代ローマ映画が誕生したわけです。なんだか愉快な話ですね。
この「テルマエ・ロマエ」、作品の舞台であるイタリア全土でも劇場公開されるそうです。
イタリアの大手映画会社であるタッカー・フィルムが配給し、過去最大規模となる50館以上の映画館で公開されるとか。
これまでイタリアで公開された日本映画といえば、「世界のキタノ」として国際的評価の高い北野武監督の「HANA−BI」、「座頭市」、そして米アカデミー外国語映画賞を受賞した「おくりびと」の3本だけです。「テルマエ・ロマエ」は、これらの作品以上の期待をかけられているわけですから、すごいですね。



ところで、ローマプレミアで現地のイタリア人に最も受けたのは、ルシウスがウォシュレットを初体験するシーンだったとか。
忘我の表情を浮かべるルシウスを見て、涙を流して拍手する観客もいたそうです。
イタリア人は、このようなネタが好きなのかもしれませんね。
また、ウォシュレットを開発したTOTOの本社がある北九州ではどこの劇場も満員だったようですが、おそらくはTOTOの社員さんもたくさん観に来ていたのでしょうね。
わたしが好きだった小ネタは、古代イタリアから現代日本へのタイムスリップが起こるたびに、オペラ歌手が登場する場面でした。
タキシードで正装した男性オペラ歌手が山の岩場のような場所で、時代が変わるたびに、いちいちオペラを熱唱するのです。あまりの馬鹿馬鹿しさに爆笑しました。
皇居のお堀にルシウスが現れるというラストシーンだけはよく理解できませんでしたが、とにかく面白い映画でした。わたしは1人で観ましたが、家族で観るのもいいでしょう。
まだ公開されていますので、観ていない方は、この週末にぜひ!


2012年5月26日 一条真也