「柔道一直線」

一条真也です。

わたしの“一条真也”というペンネームは、梶原一騎原作のテレビドラマ「柔道一直線」の主人公である“一条直也”にちなんだものです。
原作の劇画では、一条直也は小倉の出身でした。
少年時代、わたしは「柔道一直線」のドラマにはまり、大きな影響を受けました。
いやあもう、主題歌のイントロからカッコよかったですね!


桜木健一扮する一条直也の「二段投げ」とか「フェニックス」とか、とにかくアクロバティックな大技が強く印象に残っています。あと、足でピアノを弾く近藤正臣が異様でした。
ミキっぺ役の吉沢京子は、とっても可愛かったですね。
脚本を書いた佐々木守は「ウルトラセブン」などでも活躍した天才脚本家です。
サンレー北陸と長年おつきあいのある石川県・小松の㈱ビルカンの佐々木均社長は弟さんにあたります。



柔道一直線」の時代背景は、1968年のメキシコ・オリンピックの前後のようです。
1972年のミュンヘン・オリンピックを目指す柔道ニッポンを描いているわけですね。
ミュンヘンでは、「オランダの赤鬼」と呼ばれたウィリエム・ルスカが、重量級・無差別級の二階級制覇を果たしました。
ルスカは、アントニオ猪木の一連の「格闘技世界一決定戦」の最初の相手でしたね。
二人目が、プロボクシング世界ヘビー級王者のモハメド・アリでした。
そういえば、「柔道一直線」の中で一条のライバルの1人である大豪寺虎男がアメリカン・スクールのボクシング部に殴りこむ場面がありますが、ここで猪木・アリ戦を先取りしていたような描写が見られるのが興味深いですね。
力道山がプロレスを日本に持ち込むまで、戦後の日本では「柔拳」といって、柔道vs拳闘(ボクシング)の異種格闘技興行が盛んでした。
ここでも猪木・アリ状態が見られたものと想像されます。
ちなみに、猪木が極真空手出身のウィリー・ウイリアムスと闘った試合のレフリーを務めたユセフ・トルコは「柔拳」の選手でした。この猪木・ウィリー戦は梶原一騎のプロデュースで、梶原一騎とユセフ・トルコは親交がありました。
何が言いたいかというと、「柔道一直線」の梶原一騎のロマンが、猪木、ルスカ、アリ、ウィリーといった現実のファイターたちを巻き込んで“一大格闘絵巻”にまで発展したということです。つまりは、男のロマンってやつですよぉぉぉぉぉ!(ターザン山本風に)



わたしは、幼少の頃から柔道に親しんでいました。
もともと父が柔道の選手で、大学時代は東京オリンピック金メダリストの猪熊功選手と対戦するなど、なかなかの実力者でした。現在は、7段教士です。
父は大学卒業後、自ら事業を起こしてからも「天動塾」という町道場を開いて、子どもたちに柔道を教えていました。
わたし自身もそこで学んだのです。ですから、物心ついたときから柔道に親しんでいました。高校時代に2段を取得しました。



最近では、総合格闘技における吉田秀彦などの柔道出身選手の活躍で、柔道の強さが再認識され、脚光を浴びました。
しかし、企業経営においても「柔道」は大きなキーワードであると思います。
「柔よく剛を制する」の言葉のとおり、柔道で勝つには、体重や体力で勝る対戦相手が、大きさゆえに墓穴を掘るような技をかける必要があります。これによって、軽量級の選手でも、身体的にかなわない相手を倒すことができるのです。
ここから、ハーバード・ビジネス・スクールの国際経営管理部門教授のディビッド・ヨフィーらは、「柔道ストラテジー」なる最先端かつ最強の競争戦略理論を思いつきました。
柔道ストラテジーの反対は、体力やパワーを最大限に活用する「相撲ストラテジー」です。この戦法の恩恵にあずかるのは、もちろん大企業ですね。
しかし、新規参入企業の成功戦略には、必ず柔道の極意が生かされているのです。
大きな企業を倒すには、つまり柔道で勝つには三つの技を習得しなければなりません。
第1の技は「ムーブメント」で、敏捷な動きで相手のバランスを崩すことによってポジションの優位を弱める。
第2の技は「バランス」で、自分のバランスをうまく保って、相手の攻撃に対応する。
第3の技は「レバレッジ」で、てこの原理を使って能力以上の力を発揮する。柔道草創期の専門書には、「投げ技をかける前には、ムーブメントを用いなければならない。ムーブメントによって、相手を不安定なポジションに追い込む。そして、レバレッジを用いたり、動きを封じたり、手足や胴体の一部を払って投げ飛ばす」とあります。



もともとマネジメントの世界では早くから「柔道」がキーワードとなっていました。
ピーター・ドラッカーは、柔道ストラテジーに似た言葉として「起業家柔道」なるコンセプトを提示しています。
ドラッカーは、著書『イノベーションと企業家精神』(上田惇生訳、ダイヤモンド社)において、「起業家柔道の目標は、まず海岸の上陸地点を確保することだ。既成企業がまったく警戒していない場所か、守りが手薄な場所だ。それに成功し、適度な市場シェアと収益源を確保した新参者は、次に『海岸』の残りの部分に侵入し、最後に『島』全体を支配する」と書いています。
 
2010年4月10日 一条真也