「白いリボン」

一条真也です。

映画「白いリボン」を観ました。
ドイツ・オーストリア・フランス・イタリアの合作です。
監督は、「ファニーゲーム」「ピアニスト」などの名作で知られるミヒャエル・ハネケ
「ドイツの鬼才によるクライム・ミステリー」という触れ込みです。


観終わった感想は、とにかく重苦しい映画だったということ。
モノクロなのですが、映画の草創期の作品のように、ものすごく画面が暗い。
画面の明度そのものが暗いので、わたしは何度か寝てしまいました。
作品のテーマも陰鬱で、どんよりと重い。とにかく暗い。
ちなみに、白いリボンとは、悪いことをした子どもに罰として腕に白いリボンを巻くという慣習です。いわば、子どもにとっての「大人の圧力」のシンボルですね。


                    とにかく暗い映画でした


舞台は第一次世界大戦前夜のドイツ北部です。
村人たちは、プロテスタントの教えを信じています。
ところが、村には次々に不可解な事故が次々と襲い掛かるのです。
村でただ一人のドクターが、木と木の間に張られた針金に引っかかって落馬する。
大地主である男爵家の納屋の床が抜け、小作人の妻が亡くなる。
同じく男爵家の納屋に火がつけられ燃えてしまう。
たちまち、小さな村は不穏な空気に包まれます。
村人は疑心暗鬼に陥り、隣人に疑いの目を向けます。
そして、子どもたちは深い苦悩を抱えていました。
とにかく不条理な事件が相次ぐのですが、それに対する推理も展開されず、真実も明かされたのかどうか明白ではありません。
当然ながら名探偵も登場しませんし、事件がまったく解明されない。
こんなストレスのたまるクライム・ミステリーは初めてです。ハネケ監督といえば、冷徹で人を不快にさせるといわれているそうですが、まったく不可解な作品です。



映画評論家の清藤秀人氏は「eiga.com」で、この映画で起こる一連の不可解な事件について、「物事は反復されると何らかの意味を持ち始めるもの」と述べています。
さらに、清藤氏は次のように本作品を論評しています。
「時間の経緯と共に、映画はやがて明確なメッセージを観客に突きつけて来る。舞台が第1次大戦前夜の北ドイツの村であることは言うまでもない。権力を持ったコミュニティのドンたちが露骨な悪意の標的にされる。彼らが表向きは秩序や倫理を説きながら、その実、利己的で排他的な己自身の醜い有り様に気づきもしない愚かさと、そんな大人たちを冷酷に見つめる子供たちとの因果関係に思い当たった時、これがヨーロッパ映画としては画期的な“ナチス台頭前夜”にフォーカスした野心作であることが解る。権力者の精神的崩壊と宗教の不寛容は、次世代の行く末にいかに深刻な影を落とすか? 歴史が打ち鳴らすその薄ら寒い警鐘は、戦争と国益に猛進するたった今の現実と、不透明な地球の未来像をも映し出して異様な説得力がある」


                  銀座テアトルシネマの看板


うーん、この映画は“ナチス台頭前夜”にフォーカスしているだって!
たった今の現実と、不透明な地球の未来像をも映し出しているだって!
あいやー、わたしには、さっぱり理解できませんでした。
まあ、上映時間の144分のうちけっこう寝ていた時間が長かったので、わたしが重要な場面を見落としていたのかもしれません。
とにかく、人間の「不安」を描いていることだけは理解できました。
まるでムンク「叫び」を映画にしたような印象でした。


2010年12月20日 一条真也